「続・アメフラン物語」 -第6章【信じ合う二人】-

「続・アメフラン物語」 -第6章【信じ合う二人】-


路地は街灯の明かりで照らされ、街は夜の闇に包まれていた。

シェディーとほたるは、ウェスタン大通りを左に曲がり、

ほたるの指示で数十メートル先の細い路地で馬を止めた。


 ほたる[14]
   「この先に奴らがいるよ」

 シェディー[158]
   『急ごう』


細い路地を走る時、一瞬誰かの強烈な視線を感じたシェディーだったが、

今はその事を気にかけている時では無かった。


しばらく走った後、曲がり角で歩みを止めたほたる。

 ほたる[15]
   「その先にクニさんがいるよ」


クニは身を隠しながら、何かを頭にかぶり、一点をずっと眺めていた。

クニの視線の先には、広大な敷地の中に2階建ての廃工場があった。

 シェディー[159]
   『おい。 おまえ何かぶってんだw』


クニは振り返る事なく言葉を発した。

 クニ[24]
   「ゴモゴモゴモ、ゴモゴモゴモゴモゴモ。」


 ほたる[16]
   「なに言ってんのか分かんないww」

ほたるは小声でささやいた。


 シェディー[160]
   『ふむふむ、…って落ちてたのかそんなモンがっ!w

    ってこんなとこでコントしてるばやいかっ!w』


 ほたる[17]
   「え!?通じてたの?!w

    (すごいなこの人w で、なんて言ってたんだろ?w)

    ていうか、声でかくない…?」


クニはかぶり物を脱ぎ、そっと地面に置いた。

それは、いかにも怪しそうなカボチャをくりぬいたような仮面だった。

 クニ[25]
   「プハーッ

    いや~、いいところに落ちてたんだコレがw いいカモフラージュになるかな~と思ってね~w

    てか遅いぞシェディー、おかげでカボチャ臭くなったじゃねーかーw」


 ほたる[18]
   「ププ(シェディーさんはマジ真剣モードなのに、まだ続ける気なんだ、コントww)

    ていうか、クニさんも声でかいよ…?!」


 シェディー[161]
   『…ってそれかぶるからだろっ!

    と言いたいところだが、いい加減に今の状況を教えてくれ。

    おまえのじゃなくマスターのなw』


 ほたる[19]
   「ププ(言ってるしww)

    やべっ!今の絶対門番に聞こえてるよ!」

 クニ[26]
   「ああ。マスターはあの建物にいる。」


 ほたる[20]
   「ププ(急にシリアスタッチな表情になったw)」

 クニ[27]
   「チラッ。おいそこ!笑うなw

    でだw

    おそらくラルフとあいつの親父が主謀だろう。 うさんくさい連中も10人くらいいるな。」


 シェディー[162]
   『そうか。 あと10分くらいしたら、ジュエルさんとオルケスタの増援がくるはずだ。

    それまでもつか?』

 クニ[28]
   「わからん。建物の中の様子はここからだと見えないし、入口の門番も3人いるからな。」



 門番A「さっきから、あそこで話し声が聞えないか?」

 門番B「見に行くか!?」

 門番A「一緒に来てくれ。」


 シェディー[163]
   『ほたる、急いで戻れ。

    ジュエルさん達の誘導を頼む。』


 ほたる[21]
   「うん、わかった!」


ほたるは、静かにその場から立ち去り、走ってギルドへ向かった。


 シェディー[164]
   『クニ、行くぞ。』


シェディーの合図にクニはうなずき、隠れるように数歩下がった。

そこへ、門番が二人やってきた。



 コロコロコロ~



 門番A「ん?なんだこの仮面は?」


 バタン!


 ドッテ!



門番は一瞬のうちに倒れた。

クニは入口の横に隠れ、門番達はそれぞれ、一撃で気絶させられていた。


異常に気付いた残りの門番は、急いで建屋に戻ろうとした時、

背後から強烈な痛みを感じ、そのまま気を失い地面に倒れ込んだ。

シェディーは忍者のような素早い動きで、たった数秒の間に門番の死角へと回り込んでいた。


 クニ[29]
   「おう、ちょっと待ってくれー。さっきのコレかぶんねーと調子が…」

 シェディー[165]
   『いらねーだろw』


クニはシェディーと合流した。

シェディーは既に覚悟を決めていた。


クニも、シェディーの覚悟を理解し、共に最後まで闘う事を決意していた。

こうなる事は、二人とも分かっていた。


彼らの前には、異変を察知した連中が建物内から押し寄せて来る。

たった二人だけで、10人近くの傭兵達を相手にしようとしていた。


傭兵どもは、相手を殺しに来るが、

シェディーとクニ、ギルドのメンバーは、

いかなる時も誰一人として“人を殺めない戦い方”をした。


二人は決してひるまなかった。

覚悟は揺るぎ無いモノだった。


シェディーはマスターを守るため、そして、クニはシェディーを守るため、

二人が覚悟したのは、死の覚悟ではなく…




生き抜く覚悟だった。


仲間を想うギルドの熱い気迫は、私欲で行動する傭兵を圧倒していた。




それは、まさに死闘だった。


地面に倒れていたのは、全て傭兵だった。

しかし、地面には血が滴(したた)り落ちる…。


“殺さずの戦術”は、この戦況において不利であったのは言うまでも無かった。

傭兵の刃が、二人の身体を切り刻んでいた。


特にクニは重症だった。

シェディーをかばい、自らを犠牲にして傭兵の一撃を喰らっていた。


 シェディー[166]
   『おいっ!クニ! 大丈夫か? おいっ!!』

 クニ[30]
   「へへ…、すまねぇ…、どうやらオレはここまでのようだ。」


片膝をついていたクニは、その場に仰向けになって倒れ込んだ。

腹部には、刀で刺された深い傷があった。


 シェディー[167]
   『おいっ!…ここで待ってろ。すぐに助けが来る!』

 クニ[31]
   「お前なら、きっとマスターを助け出せる。 あとは頼んだぞ……」


 シェディー[168]
   『くっ…、オレは…。』


シェディーは迷った。

クニを連れて引き上げるか、マスターを助けにいくか。



その時…


 クニ[32]
   「ふふ、なに迷ってる。 オレの活躍を無駄にする気か。

    オレの生きざま、死にざまを、これからの子供達に伝えてくれ。

    行けっ!シェディー!」


シェディーの涙が地面に落ちる。

クニの視界は霞み、シェディーの表情が良く見えていなかったが、

シェディーが泣いている事は分かっていた。


シェディーは必死にこらえていた…。

溢れる涙と、

友を苦しめた自分の不甲斐無さを。


 シェディー[169]
   『マスターを連れてくる! それまで死ぬんじゃないぞっ!』


 クニ[33]
   「…うぅ」




シェディーは決意した。


友の想いに応えるため、マスターを守るため、

片足を引きずりながら、建物内に入って行った。


その光景を2階から眺めていた人物がいた。


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【マスターの回想】

ギルド“カイトキャッツ”2階マスターの自室にて…


 レイン[22]
   「マスター、晩御飯の支度手伝ってくるんで、ゆっくりしててね~」


レインが退室したのを見計らったかのように、何かが窓を叩く音がした。

マスターが窓に近づき、カーテンを開けると…


窓の隙間に紙きれが挟まっていた。

マスターは紙切れを眺めた…


 “ウェスタン通りの路地裏にある廃工場へ、土地の権利書を持って、誰にも気付かれずに一人で来い。”

 “もし来なければ、残りのギルドメンバーとその家族が、お前の息子と同じ運命をたどる事になる。”


マスターは紙切れをポケットに入れ、心に決めた。

今日で全てを終わらせようと。


マスターはメンバーに気付かれないように、裏口からこっそりとギルドを出て行った。

廃工場に着いたマスターは、2階へと案内された。


 マスター・シド[31]
   「やはり全てはオマエの仕業だったか」

 デスブライト[8]
   「ふふ、もうお前のギルドはおしまいだ。」


デスブライトは、ギルドメンバーであるラルフの父親であった。

その横には、ラルフの姿があった。


 マスター[32]
   「用件はなんだ?…カネか?」

 デスブライト[9]
   「貴様のギルド。フフ」


 マスター[33]
   「…。」

 デスブライト[10]
   「ここでお前を殺し、権利書はオレのもんだ。フフフ」


 マスター[34]
   「ギルドの連中はどうする気だ?」

 デスブライト[11]
   「なーに、一人ずつ始末していくまでよ。 まずは晩飯に毒でも盛って、毒殺から始めようか…。」


 マスター[35]
   「なにっ!?」

 デスブライト[12]
   「もう食ったかな~? もう死んだかな~? フッフッフ」


 マスター[36]
   「っ貴様らー!!」

 デスブライト[13]
   「解毒薬はここにあるぞ。 お得意の魔法では治せない特別な毒なんでな。

    さあ、権利書をよこせ。 ギルドの連中はこの解毒薬で助けてやろう。フッフフ」


 マスター[37]
   「分かった。だが、ギルドの連中は殺らせん。先に解毒薬をよこせ。」

 デスブライト[14]
   「フフフ、いいだろう。」


デスブライトは解毒の液体が入ったビンをマスター・シドの脚元へ届くように転がした。

受け取ったシドは、ビンの中身を確認したあと、上着の内ポケットから権利書を取り出し、床に落とした。


 デスブライト[15]
   「よしよし、これで貴様に用は無い…、

    その前に聞きたい事が有る。 エルフの娘は今どこだ?」

 マスター[38]
   「おい待てっ! 解毒薬をギルドに持っていかせてくれ!」


 デスブライト[16]
   「そんな事は知らん。お前さんお得意の魔法で届けられんのか?ハッハッハー」

 マスター[39]
   「くっ」


 デスブライト[17]
   「娘はどこだ?」

 マスター[40]
   「知らん!」


 デスブライト[18]
   「いい資金源になりそうなんだがな~。フフフフ」

 マスター[41]
   「貴様、なにを!?」


 デスブライト[19]
   「これぞ、現代の錬金術といったところだな。ハーハッハッハ」

 マスター[42]
   「貴様の好きにはさせん!」


グホッ!

マスターの腹部にコブシがめり込み、そのまま床にうずくまった。

 デスブライト[20]
   「フフフ、だいぶ弱ってるようだな?え? 昔の強さはどこに行ったのやら? ハッハッハー

    最後にいいものを見せてやろう。フフ」


デスブライトは傭兵に何やら指示を出した。

 マスター[43]
   「おいっ!!」


奥の部屋から連れて出てきたのは…、年配で細身の女性だった。

 マスター[44]
   「オマエまさかその人は!? シェディーの?」

 デスブライト[21]
   「そうだ、せっかくお前が助けた命を、今ここで終わらせてやる。フフフ」


シェディーの母親は何か言いたそうだったが、ガムテープで口をふさがれていた。

 マスター[45]
   「待て、どうすれば助けてくれる?」

 デスブライト[22]
   「そうだな、娘の居場所を教えろ。」


 マスター[46]
   「…アメを追って出て行った。」

 デスブライト[23]
   「フフ、ならばじきにギルドに戻ってくるな。」



ワァァーー!!

何やら外が騒がしい。

 デスブライト[24]
   「ん?」


デスブライトが窓のカーテンを開けると、傭兵達が闘っていた。

相手を探すと…、たった二人だった事に驚いた。

 デスブライト[25]
   「おいおい、たった二人でここに来たというのか。ハハハ」

 マスター[47]
   「むむ!」


外が騒いでいる間に、マスターは縄で縛られ、口をガムテープでふさがれた。


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【シェディーの回想】


シェディーは死闘の後、2階へと急いだ。

2階の鉄扉前には見張りの大男がいたが、手負いの侍は、瞬く間にその大男を倒していた。


ショックの魔法で隙を作り、首に一撃を加え気絶させていた。

侍は初級の魔道士系魔法を使う事ができ、獣を相手にする時によく用いる戦法だった。


鉄扉に耳を近づけると、マスターの声が聞こえた。

ボロボロの身体で傷が痛む中、意識を集中させた。


部屋の中に自分の母親が人質でいる事が分かった。

扉は頑丈で、当然のように中から施錠されており、ビクともしなかった。


ドンドンドンドン!


 デスブライト[26]
   「フフ、来たか。」


椅子から立ち上がり、窓の外を眺めるデスブライト。

 デスブライト[27]
   「フッ、たった二人でうちの傭兵を全員気絶させるとは…、大したもんだ。

    だが、血だらけでもう死にそうなのが一人寝転がってるな。」

    おいっ、弓矢でやっちまえ。」


デスブライトは傭兵に指示を出した。

 マスター[48]
   「っ!」


窓を開け放った傭兵は狙いをクニに定め、

その手から矢は放たれた…。


 マスター[49]
   「っ!!」

 シェディー[170]
   『おい待てっ!?』


鉄扉越しにシェディーは会話を聞きとっていた。



ドシュッ!!

 クニ[34]
   「アァーーーーーッ!!」


 シェディー[171]
   『クニーーーーッ!!』


 マスター[50]
   「くっ…」


傭兵の矢は、クニの左の太ももに突き刺さっていた。


 デスブライト[28]
   「フフ、これで動けんな。 次でとどめだ…、心臓を狙え。」


シェディーは一目散に階段を駆け降り、クニの元へと走った。

動かせない右脚は気にせず、どんなに痛くてもシェディーは全力で走った。


 シェディー[172]
   『よけろーーーーっ!! クニーーーーっ!!』


 クニ[35]
   「来るなシェディーーーっ!!」


 デスブライト[29]
   「フフッ、叫んでも無駄だ。 やれっ!」


傭兵は弓を構え、一撃目の風向きを計算し、照準を合わせた。



ピシィーン!!



その瞬間…

悲鳴を挙げたのは、傭兵だった。

右手を抑え、床に転がって苦痛にもがく傭兵。

弓の壊れた破片が手に刺さったようだ。


 デスブライト[30]
   「おいっ!?

    …これは、弾丸。 いったいどこから?

    おいっ!スナイパーがいるぞっ!窓から離れろっ!」



 マスター[51]
   「?(スナイパー? …まさか!?)」


クニの元に転んで倒れ込みながら駆け寄ったシェディーは、

急に銃声が聞こえたので、いったい何が起こっているのか把握できないでいた。


そして、クニと自分が無事なのが分かり、2階を見上げた。 


 シェディー[173]
   『もしかして…、マスターか母さんが撃たれたのか?』


 男[1]
   「おいっ!」


前の方から男の声がした。


シェディーはクニをかばいながら振り向いたが…

シェディーにはその男が誰なのかが、全く分からなかった。


敵対している様子はなく、むしろ友好的な雰囲気だった。

 シェディー[174]
   『誰だ?』


 男[2]
   「オレ達はおまえ達の仲間だ。 シェディーだろ?」

    オレはカイト・キャッツの初期メンバー、ララ。

    うちらは皆、君達と同じヒューマン。

    女みたいな名前だが、正真正銘のイケメンだw」


 シェディー[175]
   『そ… そうか(自分で言うんだね、君w)』


ララは色黒で背が高くスリム。

腰に刀を身に付けていた。


 ララ[3]
   「さっき、君らが急いで路地に消えるのを見て、もしやと思って探してたんだ。」

 シェディー[176]
   『なぜオレ達の事を知っている?』


 ララ[4]
   「風の噂で耳にしてたんだ。 君らの活躍をね。」

 シェディー[177]
   『さっきの銃弾はもしや?』


 ララ[5]
   「そう、兄貴のアルだ。 向こうにいる二人がそうだ。」


一人の手には銃、

もう一人の手には、シェディーが見たことも無い大きな武器を持っていた。


 ララ[6]
   「アルはまだ狙撃体制を解いていない。

    とりあえず、彼を安全な建物内へ運ぼう。」


 シェディー[178]
   『済まない』


ララは静かにうなずき、二人でクニを運んだ。


2階の窓とカーテンは閉められ、

二人の男がララの元に駆け付けた。


 シェディー[179]
   『危ない所を助けて頂き、感謝します。』

 アル[1]
   「なーに、叫び声が聞こえたんで、とっさに敵を探したんだが、

    分かりやすい所に狙ってる弓が見えたからね。」


 ララ[7]
   「こっちがスナイパーのアル、こっちがハンマー使いのタケ。」


アルは色黒で背が低くスリム。

ライフルのような軽量の銃を持っていた。


タケは背が低くガッチリした体格で、大きな鈍器のような武器を背負っていた。


シェディーは心の中で思っていた…。

 シェディー[180]
   『(イケメン兄弟!)』



 ララ[8]
   「残念だが、誰も回復魔法は使えないんだ。 詳しい事は後にしよう。 さあ、指示を。」

 シェディー[181]
   『感謝する。 俺はシェディー、こっちはクニ…。』


シェディーは苦しそうなクニを見つめ、しばらく声を発せなくなった。

それを見て声を掛けたのは、ララだった。


 ララ[9]
   「よしっ、オレがクニを見ておこう。 傷薬くらいなら持ってるからな。」

 シェディー[182]
   『済まない』


シェディーはひと息深呼吸して、皆に状況をを伝えた。


 ララ[10]
   「よし、一刻も早くマスターをここに連れてこよう。」 

 タケ[1]
   「鉄扉なんて、このオレに任せとけって~^^」



 デスブライト[31]
   「どうやら、連中は建物内に避難したようだな。 だが大勢は変わらん!俺の勝ちだ。」

デスブライトは、ナイフをシェディーの母親のノド元に近づけた。

 デスブライト[32]
   「オマエ達は人質だ。今日で全滅させてやる。」


 マスター[52]
   「くっ…」

 シェディー[183]
   『マスター!! 今からそっちに行きますよー!!』


鉄扉の向こう側にシェディーがいる。

マスターとシェディーの母親は希望を抱いたが、他の連中は違っていた。


 デスブライト[33]
   「ハハハ、無駄だ、その扉は絶対に開かん!」


ドーン!!ガラガラ。

ドーン!!ガラガラ。


タケはなんと、鉄扉の横のコンクリートを叩いて壊し、

壁の鉄筋をねじ曲げて侵入路を確保した。


中の者はあまりの衝撃のため、

呆気にとられていた。


ドーン!!ガラガラ。


砂煙が舞う中、アルは銃口を部屋の中に向けていた。

 デスブライト[34]
   「おいっ!オマエ達にはコレが見えないのか?」


デスブライトは縄で縛った二人にナイフをチラつかせてた。

 シェディー[184]
   『おふくろー!』


アルは止むなく銃口を下げた。

 デスブライト[35]
   「銃をこっちに投げろ。弾は抜くなよ!」


アルは銃を軽く投げると、部屋の手前で止まった。

 デスブライト[36]
   「おい、何の真似だ? こっちの部屋に投げろ。」

 アル[2]
   「これは俺の大事な武器だ。 欲しかったら取りに来いよ。」


アルは賭けに出た。銃を取られたら間違いなく全員が殺される。

残りの弾丸は、あと5発も残っていたからだ。

 デスブライト[37]
   「おい、取りに行け。」


デスブライトは傭兵に指示を出した。

傭兵が一歩一歩、銃に近づく…、

そして、銃を手にしようとした瞬間!


ドーーーーン!!!


今度は地鳴りのような轟音と震動が辺りに響き渡った!


タケは廊下の死角に隠れ、ハンマーを銃が落ちている付近にスタンプしたのだった。

床に空いた穴で傭兵がバランスを崩したところへ、シェディーはすかさず“みね打ち”で気絶させた。


そしてなんと、銃はアルの眼前へと跳ね上がっていて、アルの手元に納まった瞬間…。

5発の銃声が鳴り響いていた!


 アル[3]
   「ナイス、タケ♪」


1発目はデスブライトのナイフを打ち抜き、残り4発は、4人全ての傭兵の片足を射抜いていた。


その隙にシェディーとタケは部屋に侵入し、マスターを保護した。

しかし、シェディーの母親はまだ、デスブライトの近くにいたため、助け出せずにいた。


 デスブライト[38]
   「くっ…、なんて腕だ。だが、俺が有利なのは変わらない。

    おいっ、窓から出るぞ!」


全員が浮遊魔法レビテーションを使えるため、

デスブライトは側近の傭兵二人とラルフを引き連れ、人質と共に2階から飛び降りた。

降り立った地面には、倒れた傭兵達がいた。


シェディー達は窓の外を眺めると、

側近傭兵は、気絶していた傭兵達を次々と回復させていった。


 シェディー[185]
   『まずい! 下にはクニが! ん? アルさんがいないぞっ!?』

 タケ[2]
   「もう下にスタンバってたりして?w」


アルは狙撃後、手元を見ずにリロードしていた。


連中が窓から飛び降りたのを見計らい、自分は階段の手すりを滑り降り、

クニの元へと走っていた。


そして、その銃口は、デスブライトに向けられていた。

 デスブライト[39]
   「ま、まずいな…。」


シェディーは彼らの一連のチームワークに驚いていたが、

素早くマスターの縄を切り、ガムテープを外した。


 シェディー[186]
   『マスター! お怪我はありませんか?』

 マスター[53]
   「ああ、腹を殴られたが大丈夫だ。」


 シェディー[187]
   『あいつらめー!

    あ、それよりもクニが重傷なんです! 急いで治療しないと、奴は…。』

 マスター[54]
   「あい、分かった。 わしをクニの元に運んでくれ。」


 タケ[3]
   「シェディー、ここは俺が^^」


ドリャーーーァァ!!


タケは明け放っていた窓から、ハンマーをなぜか外の傭兵達のいない場所を目掛けて放り投げた。

 シェディー[188]
   『マ、マジでーー!!w』

 タケ[4]
   「ダイジョブです、少々の事で壊れないから^^」


ドスーーーン!!


とてつもない大音響が辺りに響き渡った。


 シェディー[189]
   『今のは、少々ではないような…w』

 タケ[5]
   「たぶん…、ダイジョーブw^^;」


 ラルフ[1]
   「ふっ、どこ狙ってやがる。」

 デスブライト[40]
   「くっ、あいつら相当にできる連中だ。 実践慣れしてる。

    奴はあえて、誰もいない所へ投げた…

    人質には絶対に当たらない場所を選んで。

    そしてこの大音響…

    じきに町が騒ぎ出すだろう。」


 ラルフ[2]
   「ちっ、そーいう事か~。」

 デスブライト[41]
   「おいっ!」


デスブライトが合図を出した瞬間、辺りは煙幕に包まれた。


 アル[4]
   「ちっ、やられた。」

 ララ[11]
   「アル、行こう!」


 アル[5]
   「ラジャー!」


敷地の門まで走った二人を待っていたのは…、囮の傭兵5人だった。


傭兵の一人が、再び煙幕を仕掛けてきた。

アルは後ずさりし、ララはそのまま前へ進んだ。


アルは立ち止まり、右手に持っていた銃を地面に置き、背中に装着していた大口径の短銃を取り出した。

やや上向きに構えた銃口から放たれた弾丸は、なんと目視できる程の低速で、長い軌跡の弧を描いた。

ララは煙幕の外から、その光景をじっと眺めていた。


すると、煙幕の中から傭兵達の叫び声がした。

なんとアルの放った銃弾は、投網弾だった。

手ごたえを感じていたアルは、煙幕の横をすり抜けて走りだした。


そしてララは、何やら魔法を唱え始め、左手を煙幕の中に突っ込み念を込めると…、

傭兵達はショックで持っていた刀を地面に落とし、しばらくするとパニック状態に陥り、発狂しだした。


ララは魔法を唱えるとすぐに、アルの後を追っていた。

傭兵達はその後、殴り合いの末…、全滅していた。




デスブライトは逃走しながらアルの行動を眺めていた。

アルが追ってくるのを見ると、傭兵5人に“全速力で1列”になって突っ込むように指示した。


アルは追っている最中にも銃弾を装填していた。

アルは迫ってくる傭兵達を察知すると、投網弾の発射距離と敵の走るスピードを計算し、発射した。


しかし、傭兵達のスピードは想定よりも遅く、前の2人だけしか拘束できなかった。

後ろの3人が迫ってくる。


アルは長銃に持ちかえ、今度もやや上向きに構え、狙いを定めずに素早く撃った。

傭兵は一瞬ひるんだが、そのまま突っ込んできた。


銃弾は傭兵の胸元に着弾すると、白い煙が立ち上がった。

その瞬間、傭兵は “死” を覚悟したが、実際は全く “痛み” を感じていなかった。




傭兵達は少し戸惑ったあと、再び全力で突っ込んできた。

アルは続けて2発目を撃った。


弾丸のスピードは遅かったが、傭兵は全速力で走っており、

銃弾は体の中心を飛んできたので、避ける事は出来なかった。


2発目を被弾した傭兵は、意識を失い倒れ込んだ。

それを見た後ろの傭兵は、その銃弾が睡眠弾だという事に気付いた。


傭兵はもう目の前まで来ていた。

アルは最後の3発目を撃った。

2人目の傭兵は先の睡眠弾の煙を吸っていたため、一撃で眠った。


しかし、最後尾の傭兵が瞬く間もなくアルに切りかかった!

その時!

もうひとつの刃が傭兵の剣先を止めた。


 ララ[12]
   「フ~ まにあった」


そして傭兵の腹を蹴り、剣を撃ち払うと…

自らの剣を捨て、みぞおちに拳を入れ、

くるりと反転して、傭兵の首に手刀を入れ気絶させた。


 アル[6]
   「フ~ やばかったw」

   「コレ使わなくて良かったよw」


アルはブーツに隠していたナイフを抜いていた。

緊急用と言ってはいるが、普段でも使っているらしい。


アルは通常使用する長銃の弾丸も、最小の殺傷力の物を使用し、

何が有っても急所は撃たなかった。


ララもまた、剣を弾いた後、自らの剣を捨て拳で闘ったのは、

対人戦で良く用いる戦術だった。


これは、ギルド “カイト・キャッツ” の精神から来るものだった。


 アル[7]
   「俺は奴らを追う。 ララは、網の中の2人の始末を。」

 ララ[13]
   「ラジャー」


ララは再びショックの魔法唱え、すぐにアルの後を追った。

しばらく真っすぐ走ると、アルが待っていた。


 アル[8]
   「ここを曲がった先に奴らのアジトがある。」

 ララ[14]
   「とりあえず情報収集しよう」


二人は敷地をぐるっと一周し、情報収集した。

 アル[9]
   「わんさか居るねw」

 ララ[15]
   「二人じゃ厳しいな」


 アル[10]
   「アジトと敵の情報はゲットしたから、元いた場所に戻りますか~。」

 ララ[16]
   「そうだな。 とりあえず合流しないとな。」


そうして、二人は道を引き返した。


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ララとアルが敵と交戦中、

シェディーは2階からマスターを救出し、1階のクニの元へと戻っていた。


マスターはクニの容態を確認し、

まず回復魔法で腹部を治療、

そして脚に刺さった矢は、回復魔法を掛けながら、ゆっくりと引き抜いていった。


クニの治療は終わったが、マスターの魔力は著しく減少していた。


 マスター[55]
   「タケ、長い事済まんかったのぅ。」

 タケ[6]
   「いえいえマスター。 向こうでも楽しくやってましたよ^^」


 シェディー[190]
   『タケさん、二人をギルドへお願いします。』

 タケ[7]
   「わかりました^^」


 マスター[56]
   「わしは奴らのアジトへ行こう。」

 シェディー[191]
   『マスター! そのお体で回復魔法を使ったんですよ。 ここは俺が行きます!』


 マスター[57]
   「まだお前の脚の治療が残っとる。 それに、奴らのアジトはわしが知っておる。」

 シェディー[192]
   『俺の事は大丈夫です! アジトは、臭いで何とか探します!(ーωー)』


 マスター[58]
   「フフ、無理をするな。 その傷で歩いとるのが信じられんよ。」

 シェディー[193]
   『…ありがとうございます。

    でも、マスターも無理はなさらずに、最小限の治療で結構です。』


 マスター[59]
   「…済まない。 おふくろさんを助け出せんかったわい。」

 シェディー[194]
   『マスターに一度助けて頂いた、おふくろと俺の命です。 まだまだこれからですよ!』


 マスター[60]
   「…ギルドにいる爺とレインが毒でやられてるかも知れん。」

 クニ[36]
   「なんだって!?」


 シェディー[195]
   『おい、クニ! もう大丈夫なのか?』

 マスター[61]
   「奴らから手に入れた解毒薬がある。 これを持って早くギルドへ…」


 クニ[37]
   「わかりました!」

 シェディー[196]
   『おい、クニ!』


 クニ[38]
   「なんだ!」

 シェディー[197]
   『まずは解毒優先だ! 痛いだろうが、ひとっ走り行って来てくれ!』


 クニ[39]
   「わかってるって!」

 シェディー[198]
   『タケさん、俺達も一旦ギルドへ戻りましょう!』


 タケ[8]
   「わかりました!(二人につられたw)」


タケは思った。

 タケ[9]
   「(あの二人なら深追いはしないだろうし、ここはマスターの安静が第一、手薄なギルドの強化が第二。

    さすがシェディーさん、一瞬で最善策を判断し、的確に指示してる。)」


シェディーも思っていた。

 シェディー[199]
   『(この三人の素直さときたら…、やっぱりこのギルドだからなんだな。

    いくら自分達が先輩だろうと、同じ目線で合わせてくれている。

    それにこの武器…、戦闘能力も只者ではないな、この人。)』


 シェディー[200]
   『さあ、マスター! 俺の背中に。 もう元気になりましたから!

    一旦ギルドへ戻って立て直しましょう!』

 マスター[62]
   「済まぬ…、シェディーよ。」


マスターを背に乗せ、ギルドへ向かうシェディー達。

マスターの容態を考え、シェディーはゆっくりと歩いた。


タケも、二人を守るように、その後ろを歩いた。


 シェディー[201]
   『俺はいつでも…、マスターをお守りします。

    それが俺の使命。 それに、増援も来ますよ!』


 マスター[63]
   「オルケスタのか?」

 シェディー[202]
   『はい。ジュエルさんが救援要請に行ってくれました。』


 マスター[64]
   「アメはやはり…、死んだのか?」

 シェディー[203]
   『いいえ。生きてますよ!』


 マスター[65]
   「!! そうか…、それは良かった。」

 シェディー[204]
   『夏美さんとオルケスタのこももさんが、旅立ったアメを探してますよ。』


 マスター[66]
   「そうか…、何やら訳ありのようだな。」

 シェディー[205]
   『ドワーフ族の親方が助けてくれて、アメはその親方の娘を探しに旅立ちました。』


 マスター[67]
   「奴らの狙いは、エルフ、ドワーフ。 この2種族の娘…。

    エルフの娘が流すルビーの涙、それを結晶化できるのが、

    ドワーフの娘から採った生き血の中だけと言われておる。」


 シェディー[206]
   『!? …夏美さんの涙にはそんな秘密があったんですね。』

 マスター[68]
   「うむ。 わしが、儀式の中で結晶封印を掛けた。

    もう彼女が流す涙は、皆と同じ涙。

    これでこちらの世界に来て、不びんな思いはさせずに済んだ。 と思ったんだが…。」



 シェディー[207]
   『マスター…、 そうだったんですか…。』


シェディーは改めて、マスターの偉大さと優しさを感じていた。


そして、夏美を歓迎した時に流した “大粒の涙” の事を、ラルフが見ていたと確信した。


 マスター[69]
   「エルフ族というのは、前にも話したように、掟に厳しくてな。」


マスターは、よくシェディーに、各種族の特徴や掟の事を話し聞かせていた。

エルフ族の若い娘は、瞳から “ルビーの涙” を流すという事は、伝説やおとぎ話のような形で知られていた。


その涙は流れ落ちて固まり、またしばらくすると溶けてなくなる。

それゆえ、エルフ族の若い娘には、“他種族の前では絶対に涙を流してはいけない”という掟があった。


 マスター[70]
   「わしは、夏美を何としても守りたかった。」


マスターは夏美が他のエルフ族から狙われるのを恐れ、

つらく悲しい想いをさせないために、涙の結晶封印を掛けた。


 マスター[71]
   「夏美にはギルドの皆と、

    楽しい事も、嬉しい事も、悲しい事も共有できるように…

    皆と一緒に涙を流せるようにしてあげたかった。」


 シェディー[208]
   『だから、結晶化しないようにして、透明な涙に…。』

 マスター[72]
   「わしは、この術のせいで、家族とも離れ離れになった。

    エルフの里で、“涙の結晶封印”の完成に長年の歳月を費やした。

    しかし、里からは禁術扱いされ、嫌われ者になっていた。」


 マスター[73]
   「ある時、子供を産んですぐの母親が人間に見つかり、連れ去られる事件が起こってな。

    里は、一旦里を出た者が戻って来ぬようにと、赤子を殺そうとした。

    わしは必死に説得したが、嫌われ者の意見など聞き入れてもらえる筈もなく、

    赤子を助けるには、一緒に里を出るしか無いと思った。

    娘や孫と離れ離れになるのはツラかったが、わしには赤子の命の方が大事だった。」


 シェディー[209]
   『それじゃ~夏美さんは…、あなたの…。』

 マスター[74]
   「そう… わしの孫」


 シェディー[210]
   『…それじゃ~、アメはその…?』

 マスター[75]
   「そう、その赤子じゃよ。」


 シェディー[211]
   『マスター…』

 マスター[76]
   「もし、わしが死んだ後の事は…、お前に任せたぞ。」


愛弟子に秘密を打ち明けたマスターは、嬉しそうな表情をしていた。

自分の背にいるマスターの表情は見えないが、

シェディーの心の中には、優しく微笑む、いつものマスターの笑顔が浮かんでいた。


 シェディー[212]
   『…分かりました。』


シェディーは思った。

 シェディー[213]
   『(マスターは自分の命と引き換えに、ギルドを助けようとしてくれている。)』



シェディーはしばらく歩いた後、切り出した。


 シェディー[214]
   『マスター…、タケさん達には、随分と助けられましたね。』

 マスター[77]
   「ああ、彼らは初期メンバーでな。 ギルドがピンチの時も、よく助けてくれた。」


 シェディー[215]
   『ピンチ?』

 マスター[78]
   「厄介な依頼を、嫌な顔一つせずに受けてくれた。 …特に今回のは長期にわたる依頼。

    他のギルドも受けるのが嫌で、結局最後はうちに回ってきた。


    “ギルドの名を汚したくない”

    それに“自分達の習練のため”などと言っておったな~。


    本当は、皆と楽しくギルドで居たかったんだと思うがな…。

    そのおかげで、今のギルドがあると、わしは感謝しておる。」


 シェディー[216]
   『って、どんだけ長期なんですかー!』

 マスター[79]
   「ざっと3年ほどかな? その後も“習練を納得いくまでしたい”と言って、ようやく帰ってきたな。」


 シェディー[217]
   『だからこの腕前なのか~。 チームワークも半端ねーし。』

 マスター[80]
   「随分と習練してきたようだな。 もしかすると、また今度もギルドを救ってくれるやもしれん…。」 


タケは二人の話を、ずっと黙って聞き続けていたが…、


 タケ[10]
   「俺達3人は、みんなを守りたかったんですよ^^

    ギルドは絶対に守り切って見せますよ! このハンマーでねw」


 シェディー[218]
   『ギルドが壊されない事を祈ろうw』

 マスター[81]
   「そうじゃなw」


 タケ[11]
   「てへw ははは^^」


3人の後ろから足音が聞こえてくる。


 ララ[17]
   「マスター!」

 アル[11]
   「おまたせーw」


道を引き返していた二人は、

廃工場に着いても誰も居なかったので、ギルドに向かっていたのだった。


 シェディー[219]
   『おかえりー!』

 タケ[12]
   「おつかれーw」


 マスター[82]
   「ララ、アル、おかえり。」

 アル[12]
   「ララ、タケ、アルの3名は、只今帰還致しましたっ!w」


 ララ[18]
   「ちょっと笑ってるしw」

 タケ[13]
   「言いたくてうずうずしてたんだね~w」


 アル[13]
   「てへ^^」


集結した5人のすぐ先には、ギルドが見えていた。

そして前から走ってくる人影が見えた。

しかし、その表情は険しいモノだった。


 クニ[40]
   「マスター! 早くこちらへー!」





クニの叫びは、歓喜の叫びか、はたまた悲痛の叫びか。

ギルドに戻ったジュエルが、ほたるが、そしてクニが見た光景とは?




RAM WIRE 「きぼうのうた」







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