「続・アメフラン物語」 -第3章【大いなる光】-

「続・アメフラン物語」 -第3章【大いなる光】-


【バルガスの回想】

馬上のアメは、バルガスとの別れ際に、いつもの口癖でこう言った。

 アメ [42]
 「あ、そうだ。

  行き先は、誰にも言わないで…。

  ラルフも…、ボクのやり方が気に食わなかったんだろう。

  あとの事は、“仲間”に任せる。

  彼らの好きなようにすればいいんだ…。」


バルガスは、アメの背中と言葉から、彼の寂しさを感じ取っていた。


 バルガス [40]
 『わかった。 …元気でな。 お前さんの仲間に、行き先は告げないよ。』

 アメ [43]
 「必ず…、約束は守るからな。^^ノ」


 バルガス [41]
 『…もし、オレに何かあった時は…。』


アメはバルガスが言おうとした所へ、

 アメ [44]
 「バルガス! もうひとつ、約束してくれないか?」

 バルガス [42]
 『なんだ?』


 アメ [45]
 「生きていてくれ。 わたしとバルゴちゃんが帰るまで^^」  アメは足の痛みを我慢して、笑顔を作ってみせた。

 バルガス [43]
 『…ああ、約束だ。 娘を…、よろしく頼む。』


 アメ [46]
 「約束だ。」  バルガスの涙に応えるように、アメは優しく笑顔でうなづいた。


アメは振り返る事なく、急ぐように馬を走らせた。



そしてバルガスは、シェディー達を見送った後、

 バルガス [44]
 『本当に伝えなくて良かったのだろうか…。 でも、いい奴らだったな…。』



アメはバルガスと別れた後、背後から迫る夕闇から逃げようと、しばらく馬を走らせた。

我慢していた右足の痛みは、時間が経つにつれ、

アメの心のダメージと重なるようにし、増大していった…。


そして、遂には痛みに耐え切れず、最後の力を振り絞り、馬に座るように指示した。

アメは転げるように馬から降り、地面に寝転がった。

しばらくすると、辺りは暗闇に覆われた。

アメは足の痛みのため、意識を失う事も、寝ることも、移動する事も出来ずに、ただじっとしているしか無かった。


ここがどこなのかさえ分からない。 周囲の様子も、真っ暗闇の中では何が有るのかさえ分からない。

アメは松明(たいまつ)代わりに、魔法で光の玉を出す事はできるが、

悪者に見つかってしまう可能性が有るため、

自分の事は元より、仲間の命も心配して、使う事が出来なかった。


アメは痛みの中、ある人物の笑顔を思い出していた…。




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【アメの回想】


数年前の雨の日。

ギルドの定例会へマスターと同席するため、隣町へ向かう道中、

道の脇で、雨具も身に付けずに倒れている2人組を見つけた。


アメ達は慌てて駆け寄ると、2人は大ケガをしていて、全身ボロボロだった。

どうやら2人とも女のようで、エルフと人間のようだ。


 アメ [47]
 「大丈夫か!? おい! 大丈夫か!?」


かすかに反応したのはエルフの女だった。

 
 エルフの女 [1]
 「どうか、この子だけでも助けて下さい…。」


彼女は全身にケガを追っているにもかかわらず、人間の女を助けて欲しいと嘆願してきた。

可愛そうな事に…、2人とも、顔中が傷だらけだった。

助けを求める彼女の瞳からは、涙が溢れていた。

雨のせいで顔が濡れていて、一見、涙か雨かは見分けはつかないが、

アメにはそれが、涙だという事が一目で分かった。

アメは、エルフの心からの願いを、真っ直ぐに受け止めていた。


 アメ [48]
 「オヤジ! 頼む!」

 マスター :シド[8]
 『わかっておる。』


司祭であるマスターは、彼女達の状態を見るとすぐに、魔法を唱えるための精神集中を行っていた。

回復魔法を唱えると、2人は見る見るうちに元気になっていった。

2人は驚きのあまり、しばらく声を失っていた。


 エルフの女 [2]
 「あ、ありがとうございますTT」

 人間の女 [1]
 「わぁ!ありがと~^^」


 アメ [49]
 「いったい、どうしたんだ?」

 エルフの女 [3]
 「この子は、ある理由で…。」


エルフの女は、嫌な事でも思い出したのだろうか? 突如、悲しげな表情となり、しばし言葉が途切れたが、

彼女は続けて言った。


 エルフの女 [4]
 「…全身を殴られました。

  道すがら、何人かの人に助けを求めましたが…、

  私達の姿を見ると恐くなったのか、誰も助けてくれませんでした…。

  泊めてくれる宿も、お金もありません…。」

  どうか、この子だけでも、今晩泊めてあげて下さいませんか?」


涙ながらに訴える彼女を見て、アメは迷いなく答えた。


 アメ [50]
 「うちのギルドに行こう。 オヤジ、ぼくは彼女達を連れて帰る。」

 マスター:シド [9]
 『ああ、もちろん、君達を放っておく訳にはいかん。

  2人ともだいぶ弱っておる。 体の方じゃなく…、心の方だ。 うちでゆっくりさせてやれ。』


 アメ [51]
 「ああ、済まないな、オヤジ。 一緒に行けなくて。」

 マスター:シド [10]
 『わしの事はどうでも良い。 2人を助けてやれ。 あとの事は、ギルドリーダーのお前に任せる。』


 エルフの女 [5]
 「あ、あのぅ…。」

女は、しばらく涙ぐんで言いたい事が言えずにいた。


 マスター :シド [11]
 『わかっておる。 私もキミと同じ種族だからな。 キミの言いたかった言葉は、心に届いておるよ^^』


マスターは自分の左胸を右の拳で叩き、安心した笑顔を彼女に見せた。


 人間の女 [2]
 「あ、え~っと。 あたしはジュエルです。 こっちは夏美さんです。 本当に、ありがとうございました。」


ジュエルと夏美は深々と頭を下げ、マスターにお礼を言った。

ジュエルの手には、大ケガをしてもなお、握り続けていた物があった。


 マスター:シド [12]
 『困っている者を見て、放っておく奴なんぞ、うちのギルドにゃ~おらんよ^^ じゃあ、行ってくるぞ。』

マスターはそう言って、1人、定例会へ向けて歩きだした。

ジュエルと夏美は、再び深々と頭を下げ、ずっとずっと…、マスターを見送っていた。


 夏美 [59]
 「いい人って、いるもんなんですね^^」

この時だった。 アメが初めて見た、夏美の心からの笑顔は。

顔にはまだ、傷と血と、土と雨が残っていたが、アメの心に深く深く…、残る笑顔だった。


_______________________________________________


 アメ [52]
 「ふふ、やっぱり、忘れられないな、あの笑顔は^^ 今まで生きた中で、一番の笑顔だったな~。」

アメは昔の事を思い返す事で、心の痛みをも和らげようとしていた…。

だが、足の痛みは和らぐ事なく続き、アメは苦しんでいた。



遠くで明かりが灯っている。
 

どうやら、松明のようだ。

アメは、見つかるまいと、自然と身構えたが、遥か遠くの明かり、そしてここは暗闇…。

身構える必要など無い事に気付き、ふと我に返った。


アメの目は、次第に暗闇から慣れてきていた。

今宵は満月で雲も少なく、月明かりが優しく地面を照らしていた。


 アメ [53]
 「少しでも進まないと…。」

アメの気力は尽きていなかった。


杖を取り、松葉づえにして、一歩ずつ歩きだした。

馬も起き上がり、ゆっくりとアメの後ろを着いて来ていた。

この馬はいつもアメが世話している馬で、アメには従順だった。



一方、シェディー達は各ギルドへと向かっていたのだが…

出発前、村の屋敷でシェディーは、夏美に聞えないように、こももにあるお願いをしていた。

 シェディー [84]
 『夏美さんの願いを叶えてやって下さい。

  オレはどうしてもギルドに戻らないといけません。

  お願いできるのは、こももさんだけなんです。』


 こもも [71]
 「わたしも、今じっくり考えると…、なっちゃんの方が正しかったのかな~と思う。

  “今行かないと間に合わない” …実際、そうなってしまう可能性は高いのかもしんない。

  …残念だけど、ここでお別れかもね…。 でも、なっちゃんの事は、わたしにまかせて^^」


 シェディー [85]
 『ありがとうございます!』

 こもも [72]
 「お礼はいらない。 なっちゃんかジュエルさんがいれば、何にもいらなんだからw」

 シェディー [86]
 『増えてるーw』


こうして4人はギルドへ向けて出発し、

ジュエルや夏美が気付かないうちに、こももは進路を変更していた。


 ジュエル [69]
 「あれ?? 居ないっ!!」

ジュエルは振り返って見ると、後ろを走っているはずだった、こもも達が居ないのに気付いた。


 ジュエル [70]
 「ちょっとー! みんな居ないよーっ!!」

 シェディー [87]
 『オレがお願いしたんだ。 こももさんに。』


 ジュエル [71]
 「そうだったんだ…。」

 シェディー [88]
 『オレだって、アメを探したかったよ…。

  でも、アメの手紙を見て、気付いたよ。 今オレがすべき事を。』


 ジュエル [72]
 「ギルドのみんなを守る事だね。」

 シェディー [89]
 『…オレは、束縛されるのが嫌いで、どこのギルドに入っても、みんなと馴染めずに、

  すぐに他のギルドへ移ったり、傭兵の時もあった…。 これは、人に初めて話すんだけどな…。』


 ジュエル [73]
 「うん」


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 シェディー [90]
 『オレは親父を早くに亡くし、ずっとおふくろに育てられてきた。

  でも、女手ひとつじゃ稼ぎが少なくてな…。 それでもオレには、お腹一杯食べさせてくれた…。

  おふくろは朝早くから夜遅くまで、一生懸命に働いて、オレを育ててくれた…。

  オレがこの仕事をしてからも、オレがこんなだし…、

  人間だからって差別されて…、あんまり稼げなくて…、親孝行できなくてな…。

  そんな時に…、このギルドを見つけたんだ。』



チームワーク最優先ギルドへようこそ。君の思いやりが光となる!仲間とわいわい楽しくやろう♪



 シェディー [91]
 『この勧誘文を見た時、最初は“めずらしいとこだな~、でも実際はどうなんだろうな?

  と思って、ずっと外から眺めてたら…。 マスターが出てきてな、

  “お主、うちのギルドに興味があるのかな? ちと面接でも受けてみるか?

  会って早々、面接しないかだってw 何も言ってないのに、めずらしいだろ?w』


 ジュエル [74]
 「そーなんだw あたしん時はそんなの無かったよ~w (夏美さんと一緒に、すぐに許可してくれた^^)」

 シェディー
 『マスターがな…、“君の悩みを言ってみなさい”っていきなり聞くんだよw

  “お金が欲しいです”って言ったら、

  マスターは、“ちがう”って言うんだw』


 ジュエル [75]
 「へ~」

 シェディー [92]
 『(え? ちがうったって…w)

  “お金が欲しいじゃダメなんですか?” って聞くと…、

  “なぜ、お金がいるんだ?” って聞かれて、

  “…おふくろが病気なんだ”って言うと、

  “わかった。 じゃあ、君の夢はなんだ?”って聞かれて、

  “…おふくろの幸せだ”って言ったら、

  “面接は以上。 …今日はこれを持って帰りなさい。 明日から君は、このギルドの一員だ。

  って言われて、お金をくれたんだ。』


 ジュエル [76]
 「お、お金… ゴクリw」

 シェディー [93]
 『w

  “なんで、初めて会ったオレにこんな大金を…。 このまま逃げるかもしんないよオレ。

  って言うとマスターは、

  “逃げても構わんよ、お前の母さんが助かるなら。 それでいいじゃないか…。

  それに君の目を見れば、嘘じゃない事は分かる。
” そう言ってくれたんだ…。』


 ジュエル [77]
 「えっ! すごいなぁ…。」

ジュエルの瞳からは、自然と涙がこぼれていた。


 シェディー [94]
 『オレは、その言葉を聞いて、うつむいて…、しばらく何も言えずに、ずっと泣いてた。

  一言 “ありがとう” って言えば良かったんだろうが…、何も言えなかった。

  “ありがとう”だけじゃ足りないよ…、それ以上の言葉って一体何なんだよ…?

  って、ずっと言葉を探してた。 でも見つからずに…、どんどん涙が溢れ出した。

  こんなに温かくしてくれる大人が…、おふくろ以外にも居たんだなと思った。

  肩で泣いてたオレに、そっと手を当て…。』


  “世の中には、お金以上に、もっともっと大切なモノがある。

  家族、仲間。 …見えないモノもあるんだぞ。 それは…、思いやり。

  君は既にそれを持っている。 それを表に出してけば、おのずと仲間はできる。

  今日から君は、わたしの家族だ。

  さあ、泣きたい時は、恥ずかしがらずに、思いっきり泣けばいいんだよ。

  人は、自分の弱さを見せる事で、強くなれる。 さあ、顔を上げて泣きなさい^^



 シェディー [95]
 『オレは、その日に、結局お礼も言えず、立ち去ってしまった。

  次の日、オレがギルドに行くまでは、大騒ぎになってたみたいだった。』


  “え? マスターはその初めて会った男にそんな大金を挙げたの?

  “マスター、お人好しにも限度があるぜ~

  “名前も住所も聞かない面接ってどこにあんだよーw

  でも、マスターはオレを信じていてくれた。


  “大丈夫じゃよ。 彼はきっと、ここに戻ってくるよ。


 シェディー [96]
 『はーはー。 遅くなりました。

  “おかげ様でおふくろは入院できました。 ありがとうございました。” ってお礼を言ったんだ。

  そしたら…。』


  “礼は昨日受け取ったんだけどな^^ 君は言葉じゃなく、態度で示してたんだよ。

  気持ちがこもっていれば、言葉なんぞいらない時もある。

  ただ、言葉だけ「ありがとう」って言ってもらうよりも、

  その溢れ出た涙の分だけ、感謝の想いが出ておったよ。 おふくろさんを大事にしなさい^^



 シェディー [97]
 『オレは、そん時もまた大泣きしちまってな…w

  でも今度は、顔を上げて泣いてたんだよな^^

  でもギルドのみんなが、そのあとオレに話しかけてくれてな。 もちろんアメもなw

  みんなおかしな奴らでな、オレと一緒になって泣いてくれてんだ…。 おかしいだろ…TT

  オレは、もうどこにも行かないって決めたんだ。

  そして、一生、マスターについて行こうと思った。

  だからこのギルドは、オレとおふくろを助けてくれた恩あるギルド。 オレの全てなんだ。』


ジュエルは、シェディーと一緒に泣いていた。


 ジュエル [78]
 「あたしもね…、実はマスターに助けてもらったんだ。

  夏美さんから聞いた話なんだけどね…、誰かに話すのは初めてなの。」


知らないうちに、辺りは闇に包まれ、シェディーは、ゆっくりと馬を歩かせ、

ジュエルはシェディーに話を聞かせながら、2人、ギルドへと向かった。





RAM WIRE 「きぼうのうた」


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