「続・アメフラン物語」 -第5章「ギルドの仲間」-
「続・アメフラン物語」 -第5章「ギルドの仲間」-
『おかえりー!!!』
ギルド内から温かい声が飛び交った。
ギルドに帰った4人を迎えたのは、メンバー達の温かい笑顔だった。
夏美とジュエルは、すぐに笑顔になった。
夏美「ただいま^^」
ジュエル「たっだいまー!w」
夏美「(…ここが、わたしの帰る場所なんだ。)」
アメはそんな2人を見ていたが、夏美の方を見て、不安な気持ちを感じ取っていた。
夏美の心には、まだ不安な気持ちがあった。
こんな私でも、ギルドの人達は受け入れてくれるのだろうかと…。
町の人達は、果たして受け入れてくれるのだろうかと…。
アメはそんな夏美の不安を、何とかして取り除いてあげよう思っていた。
アメ「みんなに改めて紹介するよ。うちに新人2人が加わる事になったんだ!」
『いえーーぃ!!!』
すぐさま歓声があがった。
アメ「まずは、司祭になりたいという、夏美さん!」
『おおおぉーー!!!』
一斉に歓喜の声援があがった。
アメは夏美を前に送り出すと共に、自分の胸の前で何やら手を数回動かせ、誰かに合図を送った。
夏美は、歓声の中、恐る恐る前に出た。
夏美「あ、あのぅ…。」
緊張しているようだった夏美に向けて、誰かが声を掛けた。
クニ「夏美さんこれからもよろしくね~!
緊張しなくていいんだよ~! 俺達はもう仲間なんだよ~!!」
夏美「っ!!」
その言葉は、夏美の心を大きく動かした。
夏美「(何でこんなにも温かくしてくれるの?…。)」
雨の中、助けを求めて民家を訪ね歩いた記憶が蘇り、夏美はその場に座り込んでしまった。
夏美は溢れる感情を抑える事さえ忘れ…、
大粒の涙を流して泣いた。
アメは夏美の肩にそっと手を置いた。
アメ「大丈夫。もう恐い思いはしなくてもいいんだよ。
みんながいる。みんなが助けてくれるよ。」
夏美の前には、みんなが集まっていた。
クニ「大丈夫!俺達がついてるじゃないか!
悩み事があったら何でも言ってね。 俺達は今日から、仲間なんだから。」
夏美は泣きながら返事した。
夏美「…うん。」
レイン「夏美さん、よろしくね^^」
夏美の横に寄り添ったのは、レインだった。
そんなレインの頬には、涙がつたっていた。
夏美は感極まって声には出せずにいたが、ギルドメンバー全員には聞こえていた…。
夏美の感謝がこもった「ありがとう。」という、心の言葉を。
後ろで見ていたシェディーは、マスターから教わった言葉を思い出していた。
「気持ちがこもっていれば、言葉なんていらない時もある。」
シェディーは、涙ぐみ、そして微笑(ほほえ)んでいた。
ギルド内には、夏美を守るような温かい空気が流れていた。
アメ「みんな~ 2人目いくよー!w」
『おお~!!w』
アメ「召喚士の~、ジュエルさ~ん!」
『おおおーーー!!!』
一斉に、歓喜の輪が出来上がった。
ジュエル「改めまして、ジュエルですっ^^; 召喚士ですっ!w よろしくおねがいしますっ^^w」
『よろしくね~~~!!!』
大歓声に混じって、よく響く声が聞こえた。
ほたる「しょしょ、しょーかんしデスッテ―! しょーかんしって何?w しゅーかんしの仲間?w」
レイン「も~w つまんないこと言わないの!w …モンスターを呼び出せるのよ。」
ほたる「へ~。・・・、・・・、・・・ナナ、ナンデスッテー!!! アワワワワワ」
レイン「大丈夫よw 味方には攻撃してこないわよ。」
ほたる「な~んだ。つまんないのw」
レイン「さっきの怯え方は何だったの?w」
ほたる「しょしょ、しょー、りゅー、けん!」
レイン「ごまかしてる・・・w」
爺さん「しょしょ、松ー、竹ー、梅!w」
クニ「オッサンくさいってww」
アメ「あっ! これまた好きそうな人に飛び火したな~w」
ジュエル「へ~w」
… …。
ほたる「しょしょ、大ー、長ー、老!」
レイン「って “しょ” じゃなくなってるしw」
アメ「また大長老ネタ言ってるしw (こないだちょっと熱く語り過ぎたかw)」
爺さん「ショショ、ショー、ロン、ポー!」
クニ「さすがコックw」
ジュエル「誰が止めるんだろ…w」
…、…、…。 (周りの者は、あえて沈黙を演出していたw)
ジュエル「あ、もうネタ切れっぽいww」
ほたる「…、…、…。」
爺さん「…、…、…。」
クニとレインは、じーっと2人を見つめているw
ほたる「…、…、しょしょ、しょー、かん、しっ!」
アメ「ぉぃぉぃ、戻って来たよw」
ジュエル「戻ってきたね^^w」
爺さん「さーみんなで、乾、杯、じゃっ!」
ジュエル「あ、お爺さんの勝ちみたいだねww」
アメ「はは^^そうだねw さーみんなで乾杯の準備だー♪」
『おおおーーー!!!』
みんなは嬉しそうに声をあげた。
シェディーは嬉しそうに笑っていたが、ここでもマスターの言葉を思い出していた。
「1人の笑顔は皆の笑顔、1人の涙は皆の涙。 共に涙し、共に笑う。 それが、このギルド。」
シェディー「はは、今日はトコトンまで行くか~♪」
夜遅くまで宴は続き、皆の声は、常に2人を温かく包んでいた。
満月の夜、月夜に浮かんだのは、友の笑顔だった。
アメは木にもたれかかり、あの時の光景を再び思い返していた…。
シェディーがたまに見せた、あの優しい笑顔を…。
_______________________________________________
【夏美の回想】
宴が終わり、ジュエルと夏美には、2人用の部屋が用意されていた。
ジュエル「今日は色んなことがあったね。」
夏美「うん。 わたしね…、今ここに居る事が不思議で仕方ないの。 …何度も、もうダメだって思ったの…。」
ジュエル「神様があたし達を助けてくれたんだね。」
夏美「うん、きっとそう。 神様が私達を…、そしてアメさん達みんなと逢わせてくれたんだよ。」
ジュエル「今日はいい事ばっかりだったな~♪ 今日の運勢が良かったのかな?w」
夏美「毎日いい事してれば…、きっと神様が助けてくれるんだよ。」
ジュエル「夏美さんって、きっとすぐに魔法が使えるようになると思うよ。」
夏美「え?どうして?」
ジュエル「だって、夏美さん素直で優しくて、信仰心厚そうだし。」
夏美「信仰心って関係するの?」
ジュエル「そうだよ。 神様に認めてもらえないと、回復魔法は使えないんだよ~。」
夏美「そうだったんだ~。」
ジュエル「あたしも召喚魔法、頑張んないとな~w」
夏美「…(あの時の召喚獣って何だったんだろう。 …、聞くのは今度にしよう。)」
ジュエル「…(夏美さん疲れたのかな?)、夏美さん、それじゃ~おやすみなさい。」
夏美「うん。 ジュエルさん、おやすみなさい。」
翌日、そして翌々日と、アメはギルドで生活していく上で大切な事を、2人に伝えた。
ギルドの事情を説明し、町の商店街へ買い物に行ったり、料理や掃除も一緒にした。
このギルドでは、共に助け合うという事が、最も大切である事を伝えた。
そう、メンバー全員が、家族であるかのように。
そして、次の日の夕刻…、ギルドマスターが帰ってきた。
マスター「ただいま~。」
ジュエル「あっ! おかえりなさ~い^^ノ」
ジュエルは真っ先に、マスターを出迎えた。
夏美「お疲れさまでした。 先日はどうも、ありがとうございました。」
夏美はどんな時でも礼儀正しく、綺麗な姿勢で言葉を交わすのだった。
その姿はまるで、精霊のように神々しい雰囲気を持っていた。
マスター「おぉ~、2人とも元気そうだな^^」
アメ「マスター、2人に早速、面接をw」
クニ「出たよw 面接ww」
シェディー「めめめめ、面接ですってーw んじゃオレも一緒に~w」
クニ「なんでお前がww」
マスター「いや、面接はせん。 今から、契約の準備に取り掛かろう。」
アメ「え?今から?w」
シェディー「なんと!w」
ジュエル「なんだか緊張するな~w ドキドキ^^;」
夏美「大丈夫よ。」
マスター「2人とも、職業はもう決まっておるか?」
ジュエル「はい。あたしは、既に召喚士です^^;」
マスター「おお~これはめずらしい。」
夏美「わたしは…、マスターと同じ、司祭になりたいです!」
マスター「うむ…。 …良かろう。 君には充分にその資質が備わっておるようだ。」
マスターは、最初に夏美に逢った時から、その内に秘められし能力を見抜いていた。
夏美「ほんとですか!」
マスター「少し休憩してから、地下にある契約の間へ行こう。」
夏美「はい^^」
マスターは、椅子に腰かけると、間もなく夏美がやってきた。
夏美「失礼します。 マスター、お疲れさまでした。」
夏美は、マスターに飲み物を持ってきた。
マスター「おおぅ、気がきくのぉ。」
夏美「それでは、失礼しました。」
マスター「しかし、彼女達の笑顔はじつに自然だ。 ここでの生活が心から楽しいのだな。」
アメは、あれからの事を全てマスターに話した。
マスター「そうか…。 そんな事があったのか。」
シェディーがクエストから帰ってきた。
夏美とジュエルが出迎え、楽しく談笑していたシェディーだが、マスターの存在に気付くと…。
シェディー「マスター! おかえりなさい!」
シェディーは素早くマスターへ近づき、片膝をつき首(こうべ)を垂れた。
マスター「相変わらずだな。 もっと気楽にしていいぞ。」
シェディー「いえ、マスターの御恩は一生忘れません。」
シェディーは、忠義を大切にする男だった。
マスター「ふふ、まあよい。 アメから話は聞いたぞ。 顔を上げてくれい。」
シェディーはマスターの顔を見上げ、
シェディー「夏美さん達の事でしょうか?」
マスター「そうじゃ、今回はお主の働きが大きいとアメは言っていた。 本当に良くやってくれた。
彼女たちのあの笑顔を見れば、お主の明るさが彼女達を救っていたのは明白。
心から感謝する。 ありがとう。」
シェディー「…もったいない御言葉にございます。」
シェディーは、再び首を垂れた。
マスター「これからも、2人をよろしく頼むぞ。」
シェディー「はい! 仰(おお)せのままに。」
シェディーは顔を上げ、元気よくマスターに誓った。
ジュエル「シェディーさんって、じつはカッコいいんだね~www」
アメ「なぜか受けてるww」
クニ「ギャップがある男ってのは、女子には好印象なんだぞ~、アメ。」
アメ「そうなんだ~、…φ(..)メモメモ」
夏美「いつもあんな感じなの? マスターとシェディーさんって。」
クニ「うん、そうだね^^ シェディーはマスターには頭が上がらないんだ。」
「ボソボソ(何せ、命の恩人だから。)」
クニは、声をひそめて言った。
クニ「普通にしゃべると、アイツに聞こえちまうんだよなw 鼻と耳いいからアイツw」
夏美「へ~、詳しく教えてもらえませんか?」
クニは、こっそり夏美にささやいた。
クニ「まあ、簡単に言うと、病気だった母親の手術代を、会ったばかりのシェディーにあげたんだよ。」
夏美「え?」
クニ「シェディーは“このまま逃げるかもしんないぞ”って言ったけど、
マスターは“お前の母さんが助かるなら、それでいいじゃないか”
“それに、君の目を見れば、嘘じゃない事は分かる” って言ったそうなんだ。」
夏美「…マスターって、やっぱり。 思ってた通りのすごい人だったんですね。」
クニ「うん、すごいよ。 洞察力がすごいというか…、なんでも御見通しなんだよ。」
夏美「憧れちゃうな~。」
アメ「夏美さん、そろそろ準備しようか。」
夏美「はい。」
アメ「ジュエルさんとシェディーも一緒に来て欲しいそうだ。」
こうして、マスター以下5人は、夏美の“司祭の契約”を取り行うべく、地下室への階段を降りていった。
“契約の間”は、地下室の最奥にある、隠し部屋で行われた。
部屋には大小二つの魔方陣が並んでいた。
マスターは夏美を大きい方の魔方陣へと案内し、夏美を仰向けに寝かせ両手を胸の上で組ませた。
そして、自分はもう一つの小さい魔方陣の上に立った。
マスター「少し長くなりそうだ。皆は座って見てなさい。」
3人は返事をして、マスターの向かいに当たる壁際に移動し、その場に腰掛けた。
マスター「では参るぞ。」
夏美「はい。」
マスター「まず、リラックスしたまま、ずっと天井を見てなさい。
途中で眠くなるから、そのまま眠りを受け入れなさい。
目が覚めたら、契約は完了となる。 では、よろしいかな?」
夏美「はい。」
マスターは魔方陣の封印を解くため、鍵である“呪文”を唱え始めた。
アメ「おやじ、大丈夫かな…。(マスターの様子がいつもと何か違う。)」
アメは何やら違和感を感じていた。
契約の儀式は、1時間近くにまで及び、
そして、夏美は目覚めた。
夏美は、しばらく放心状態になっていた。
ジュエル「夏美さん大丈夫~~~?><;」
ジュエルが駆け寄った。
夏美はゆっくりと上半身を起こし、ジュエルは背中に手を添え、起こすのを手伝った。
アメは結果が気になり、“儀式は無事に成功したのか?” マスターに聞こうとしたが、
マスターは疲れ果て、その場に倒れ込んでしまった。
アメ「おいっおやじっ!!」 シェディー「マスターッ!!」
アメとシェディーはすぐさま、マスターに駆け寄った。
マスター「少し休むわい。」
そう言うと、その場で眠り込んでしまった。
一体どれほどの精神力を使ったというのか?
アメはいつも一緒に立ち会うので、いつもの“契約の儀式”と明らかに違っていた事に気付いていた。
アメとシェディーは、マスターの腕を肩にまわし、近くのベッドに運んで寝かせた。
アメ「今回だけ、えらく時間掛かったな…。」
シェディー「どういう事なんだ…、長旅の疲れなのか? それとも御高齢だからか?」
アメ「…、それより夏美さんが心配だ。」
シェディー「おう。」
二人が部屋に入ると、夏美は通常の意識に戻っていた。
ジュエル「マスターは大丈夫なの?」
アメ「うん、大丈夫。疲れて寝てるだけだよ。」
ジュエル「あ~良かった~^^;」
夏美「良かった~」
アメ「夏美さんは大丈夫?」
夏美「わたし…、夢見てた。 夢の中に色んな人が出てきた。」
アメ「どんな夢だったか覚えてる?」
夏美「うん。 マスターがいて、あと、若い女の人と…、知らないお爺さんやお婆さん…、みんなエルフだった。」
アメ「ごめん、そうだったのか。 それじゃあ、夢の中でどんな事したの?」
夏美「色んな魔法を教えてくれたけど、全然わからなくて、覚えていられなかった。」
アメ「マスターも魔法を教えてくれたの?」
夏美「うん。たぶん。 でも、はっきり思い出せない…。 何でだろ?」
シェディー「おいアメ。…マスターは、夏美さんに何を?」
アメ「…わからない。 マスターが目覚めてから聞こう。」
夏美「(でも、あの若い女の人…、お母さんに似てたような…。)」
_______________________________________________
アメ「(マスターが意識的に魅せた術だとすると、それはマスター自身の記憶にある人物…。)
(若い女性……! もしかすると、夏美さんって…。)
(夏美さんのお父さんは、生まれてすぐに里を出て行ったというし…。)
(それじゃ~、ボクはマスターの…。)」
シェディー「(…ん? 2人とも考え込んで…、どうしたんだろう?)」
シェディーはその場の空気を読み取り…。
シェディー「…しっかし、長かったね~ジュエルさんw」
ジュエル「うん…、退屈しちゃった^^; あっw」
シェディー「だよね~w もうオレなんかトイレに行きたくてどうしようかとww」
ジュエル「じゃ~早く行ってきなよ~ww」
シェディー「じゃ~ ジャー、ジャ~~、…行ってきまーっすww」
ジュエル「・・・」
シェディー「モーレールーw」
ジュエル「いいから早くってば~w」
シェディー「は~いw」
ジュエル「んも~うww」
シェディーは部屋を出ると、歩きながら考えていた。
マスターとアメ、それに夏美の過去を…。
数時間後、マスターは目覚めたが、アメの質問には…、
マスター「わしはただ、契約の儀式をしただけ…、
疲れと衰え、それに彼女の資質の高さで、だいぶ時間が掛かったがな。」
素質の高そうな連中を何度も契約させてきたマスターだが、今までに今回ほどの時間は掛からなかった。
それに、なぜ帰ってすぐに契約の儀式をやったのかも疑問に思っていた。
アメは納得できず、マスターを問い詰めた。
アメ「なら、なんで疲れてるのに、帰って早々に儀式を?」
マスター「わしもいつ死ぬかわからんからなw
それに資質の高いもんは、出来るだけ早く契約しとけば成長も早いからな。」
アメは納得いかない表情だった…。なぜ本当の訳を教えてくれないのか?
なぜ隠す必要があるのか?
結局、真意が分からぬままだったが、夏美の契約の儀式は、無事に成功した。
それから数年が経ち…、現在。
『おかえり~』
そこはギルド「オルケスタ」の入口。
ジュエルは、なぜか外にいたオルケスタメンバー2人に声を掛けられた。
シェディーは「マスターが気になる」と言い残し、ジュエルを置いてマスターの元へ馬を走らせていた。
アラオ「早かったんだね~、もう真っ暗だけどw」
デスペラード「おこんばんです~^^」
ジュエル「こんばんわ~w ・・・」
ジュエルは2人の風貌、シチュエーションを見て、唖然としていたw
ジュエル「…なんでこんなとこ(道の真ん中w)にいるの?w」
アラオ「“ストリート好き”なもんでw」
デスペラード「“仮面好き”なもんでw」
ジュエル「・・・ “道着好き”だからじゃないんだ?w」
デスペラード「道着はオプションです!w」
ジュエル「・・・ どっちも良く分かんないんだけど~w
あの~そんな事よりww マスターに謁見したいのですが、こももさんの事で^^;」
デスペラード「そそそそ、そんな事!ww」
アラオ「言われてますぞw Dさんw」
デスペラード「You win! Perfect!!」
アラオ「Sha---!!」
ジュエル「・・・ 良く分かんないw」
デスペラード「さぁさぁ、マスターはおそらく2階にいますよ。 どぞどぞ。」
ジュエル「ありがと^^」
怪しい格好のDさんの案内で、オルケスタのマスターと謁見したジュエルは、事の次第を説明した。
オルケ・マスター「ふむふむ、そういう事か…。ならば、急ぎ増援を出そう。」
「こももは大丈夫じゃろうが、夏美さんが心配じゃw …あ、アメもじゃよw」
ジュエル「あ、はい^^; (こももさんは心配してないんだ…w)」
マスターは立ち上がり、ジュエルを連れて1階へと降りた。
マスターはメンバーに事情を説明し、増援メンバーを発表した。
オルケ・マスター「まず、こももと夏美さん、それに負傷したアメの捜索には、
ノーマ、アラオ、ミント、ひなた。
この4名で行ってもらう。 馬は2頭で行ってくれ。
手掛かりは、“アメは足を負傷し、炭鉱村から伸びる川沿いを馬で下っている”という事だけ。
魔法での明かりは禁止とする。 追手に見つかる危険性があるからじゃ。
ではノーマ、あとは頼んだぞ。」
ノーマ「はい! わかりマスタ!」
「ぅんだばみんなぁ! ずんび(準備ねw)すっだべさ~っ!」
アラオ「ぅんだば~!」
ミント「ずんびずんび~♪」
ひなた「だべさだべさ~♪w」
ジュエル「さっすがオルケスタ。 …どんなにつまんなくても、合わすのがお上手w^^;」
デスペラード「ぷぷw つまんないってさw」
ノーマ「なんだとー!w …こないだ素の方がオモロイって言われたのに~w」
デスペラード「どっちでもつまんない… ぷぷw」
ノーマ「ずんびがあるから、あんまりいじらねえで区ダセエw」
オルケ・マスター「コホン=3w え~そして~、ギルド“カイト・キャッツ”への増援には~!
テネシー、コヴァ、ハニー、麗奈。
こちらについては急を要す! 急ぎ準備して出発だ!
わしもジュエルさんと一緒に行こう!
“留守番”組には、馬を3頭用意してきてもらおう。」
テネシー「よし! すぐに準備しよう! 時間が無い!」
コヴァ「よし! 急ごう!」
麗奈「よし! 行くか!」
デスペラード「よしっ! 幾三っ! …あっ!オレ“留守番”組かw」
えれ「ちょっ! …あ、わたしもかw」
丹波「んじゃ~3人でお馬さん連れてきますか~♪」
マスターもさすがに状況を察し、…裸足でグローブをはめた仮面の男は、留守番としたw
デスペラード「みんな、あえて“幾三”は総スルーなのね…w」
ハニー「なんかみんな気合い入ってるな~w この歴代リーダーズめーw」
麗奈「あ、それアメさんの言い方w あっし達向こうのがいいんじゃないの?w」
ハニー「マスターは感情と冷静さを秤(はかり)にかけて選んだんだよ~。…たぶんw」
麗奈「んだんだw こっちは気合入りすぎだもんねw 約3人がw」
ハニー「って“約”いらないからw 3人っ!w」
麗奈「も~ 遠慮せずに気合い入れてこ~よ~w」
ミント「ぅんだば、こちとらお先に行ってきやすね~」
ひなた「みぃーつぅー」
アラオ「ノーマ置いてくぞーw」
ノーマ「お、置いてかないでーw まままま、まてやぁー!」
ひなた「アメさんの寝顔まてやぁー!」
ミント「寝顔まてやぁーw (ん?なんで寝顔?w)」
アラオ「まてやぁー!」
ジュエル「あ、シェディさんマネが連鎖してるw^^;」
ノーマ「にゃろまてーぃw」
ジュエル「あ、アメさんも入ったw …最近、アメさんそれ言わないな~。。。」
オルケ・マスター「大丈夫。 明るい未来を取り戻せば、きっとまた言ってくれるよ。」
マスターはジュエルの肩を、そっと叩いた。
麗奈「ずんびバンタン!」
テネシー「デワ、イキマスカ!」
コヴァ「イカレマスカ!」
ハニー「っしゃ!いこうっ!」
麗奈「よしっ! みんないい感じの気合い乗りですよっ! マスターw」
オルケ・マスター「よしよし。 頼もしいわい^^ でわ助さん角さん、参りますかっ!?」
テネシー「あいさー!」
コヴァ「こいさー!」
麗奈「どっこいさー!」
ハニー「ハイでたw オヤジギャグw リーダーズめーw」
ジュエル「あ、またアメさんw マスターまでこんなだとはww」
麗奈「ん?ジュエルさん今なんて?w “こんな”ですって?w」
ジュエル「あ、いえw なんにも言ってませんw (耳いいな~ww これは不用意にしゃべっちゃダメだな~w)
…でも、このギルドも楽しそうだな~w ぼそっ(ちょっとカオス気味だけどww)」
麗奈「え?ジュエルさん、なんか今“カオス”って聴こえたような?w」
ジュエル「いえw ひとり言ですw^^;」
麗奈「すごい汗w、大丈夫かな?この子w」
こうして、カオスな雰囲気のオルケスタのメンバーと共に、ジュエルはカイト・キャッツへと向かった。
ジュエルは道中も思っていた…「早く行きたかったんだけどな~ww」
一方、カイト・キャッツ前に着いたシェディーは…、
シェディー「(マスター…。)」
ギルドの手前で馬から降りたシェディーは、様子をうかがいながらギルドの正面玄関に近づいて行った。
中はいつもの様子と変わりはないようだった。
シェディー「ただいまー!」
爺さん「お~、おかえり~。 ってこんな早く帰ってきて…? クエストはどうしたんだい?」
厨房から爺さんが出てきて言った。
シェディー「マスターは?」
爺さん「あぁ、部屋にいるはず…。クニとほたるが見とるんじゃないかのぅ?」
シェディーはそれを聞くと、急いで2階へ駆け上がった。
爺さん「まったく、せっかちじゃの~ぉw」
爺さんは再び厨房に入り、晩御飯の準備をした。
コンコン=3=3
シェディーはマスターの部屋をノックしたが、中からは返事も物音一つも聞こえてこなかった。
寝ているのかと思い、ドアをゆっくり開け中の様子を覗き見ると…、
ベッドの上に、マスターの姿は無かった。
シェディーは部屋に駆け込み、マスターを探した。
シェディー「マスター!?」
呼んでも返事が聞こえてこない。
遅れて厨房で爺さんをを手伝っていたレインが、部屋に入ってきた。
レイン「シェディーさんおかえり~、どうかしたの? 急いでたけど。」
シェディー「いない。」
レイン「え?!」
シェディー「マスターがどこにもいないんだ!」
レイン「いつ出て行ったのかしら?」
シェディー「トイレか? クンクン(-ωー)」
レイン「も~w わたし見てくるw」
シェディーはこういう状況であっても、女性といる時は“三枚目”に振る舞う癖があった。
だが、シェディーは不安だった。
なにか手掛かりが有るはずだと、辺りを見渡した。
机の上、引き出しの中、枕の下、ベッドの下…。
そこへ、レインが走ってきた。
レイン「マスターがどこにもいないの! トイレにも、他の部屋にも!」
シェディー「あのお体で一体どこへ? もしかしてアメを追って?」
レイン「うーうん。 晩御飯の準備をする前は看病してたから…、それにもう真っ暗なのに無理よ。」
シェディー「でもマスターなら行くかもな~。」
レイン「あれ? そーいえば、クニさんとほたる君がいない!?」
シェディー「あいつら、こんな時にどこ行ったんだ!?」
シェディー「マスターの行き先…、(ナンパ? いやいやオレじゃあるまいし…w)、…地下室、…オルケスタ。」
レイン「わたし見て来ようか?」
シェディー「いや、オレが行くよ。 レインさんは爺さんと一緒にいて。」
レイン「わかった。」
シェディーは地下室に降り、契約の間も覗いたが、人の気配は無かった。
そして、オルケスタへ戻ろうと、庭で待たせていた馬に近づこうとした時、
ほたる「おーい!」
遠くから聞こえてきたのは、ほたるの声だった。
シェディー「一体どうした?」
ほたる「マスターがピンチなんだ!」
シェディー「なにっ!! おいっ! どこなんだ!?」
シェディーの迫力に驚き、ほたるは戸惑いながらも答えた。
ほたる「あ、案内するよ。 クニさんがそこで様子をうかがってるんだ。」
シェディー「馬で行くぞ! 乗れ!」
ほたる「うん。」
2人の声を聞いて、レインがギルドを飛び出してきた。
シェディー「レインさん! マスターのところへ行ってくる! だから、ギルドを頼む!」
レイン「え? 場所はどこ?」
ほたる「ウェスタン大通りの路地裏だよ。」
シェディー「分岐に馬を置いてく! もしジュエルさんと増援が来たら、部隊の半分でこっちに来て!」
レイン「分かった~! 気を付けてね~!」
レインはあえて聞かなかったが、あのシェディーの慌てぶりを見て、ことの重大性を察した。
しかし、今のギルドには2人しか残っていない…、ギルドの防衛は不安だった。
レイン「も~、あの3人は一体どこ行ったのよ~。 早く帰ってきてよ~><」
レインの言う3人とは…? 次回につづく。
GARNET CROW - Fill Away
『おかえりー!!!』
ギルド内から温かい声が飛び交った。
ギルドに帰った4人を迎えたのは、メンバー達の温かい笑顔だった。
夏美とジュエルは、すぐに笑顔になった。
夏美「ただいま^^」
ジュエル「たっだいまー!w」
夏美「(…ここが、わたしの帰る場所なんだ。)」
アメはそんな2人を見ていたが、夏美の方を見て、不安な気持ちを感じ取っていた。
夏美の心には、まだ不安な気持ちがあった。
こんな私でも、ギルドの人達は受け入れてくれるのだろうかと…。
町の人達は、果たして受け入れてくれるのだろうかと…。
アメはそんな夏美の不安を、何とかして取り除いてあげよう思っていた。
アメ「みんなに改めて紹介するよ。うちに新人2人が加わる事になったんだ!」
『いえーーぃ!!!』
すぐさま歓声があがった。
アメ「まずは、司祭になりたいという、夏美さん!」
『おおおぉーー!!!』
一斉に歓喜の声援があがった。
アメは夏美を前に送り出すと共に、自分の胸の前で何やら手を数回動かせ、誰かに合図を送った。
夏美は、歓声の中、恐る恐る前に出た。
夏美「あ、あのぅ…。」
緊張しているようだった夏美に向けて、誰かが声を掛けた。
クニ「夏美さんこれからもよろしくね~!
緊張しなくていいんだよ~! 俺達はもう仲間なんだよ~!!」
夏美「っ!!」
その言葉は、夏美の心を大きく動かした。
夏美「(何でこんなにも温かくしてくれるの?…。)」
雨の中、助けを求めて民家を訪ね歩いた記憶が蘇り、夏美はその場に座り込んでしまった。
夏美は溢れる感情を抑える事さえ忘れ…、
大粒の涙を流して泣いた。
アメは夏美の肩にそっと手を置いた。
アメ「大丈夫。もう恐い思いはしなくてもいいんだよ。
みんながいる。みんなが助けてくれるよ。」
夏美の前には、みんなが集まっていた。
クニ「大丈夫!俺達がついてるじゃないか!
悩み事があったら何でも言ってね。 俺達は今日から、仲間なんだから。」
夏美は泣きながら返事した。
夏美「…うん。」
レイン「夏美さん、よろしくね^^」
夏美の横に寄り添ったのは、レインだった。
そんなレインの頬には、涙がつたっていた。
夏美は感極まって声には出せずにいたが、ギルドメンバー全員には聞こえていた…。
夏美の感謝がこもった「ありがとう。」という、心の言葉を。
後ろで見ていたシェディーは、マスターから教わった言葉を思い出していた。
「気持ちがこもっていれば、言葉なんていらない時もある。」
シェディーは、涙ぐみ、そして微笑(ほほえ)んでいた。
ギルド内には、夏美を守るような温かい空気が流れていた。
アメ「みんな~ 2人目いくよー!w」
『おお~!!w』
アメ「召喚士の~、ジュエルさ~ん!」
『おおおーーー!!!』
一斉に、歓喜の輪が出来上がった。
ジュエル「改めまして、ジュエルですっ^^; 召喚士ですっ!w よろしくおねがいしますっ^^w」
『よろしくね~~~!!!』
大歓声に混じって、よく響く声が聞こえた。
ほたる「しょしょ、しょーかんしデスッテ―! しょーかんしって何?w しゅーかんしの仲間?w」
レイン「も~w つまんないこと言わないの!w …モンスターを呼び出せるのよ。」
ほたる「へ~。・・・、・・・、・・・ナナ、ナンデスッテー!!! アワワワワワ」
レイン「大丈夫よw 味方には攻撃してこないわよ。」
ほたる「な~んだ。つまんないのw」
レイン「さっきの怯え方は何だったの?w」
ほたる「しょしょ、しょー、りゅー、けん!」
レイン「ごまかしてる・・・w」
爺さん「しょしょ、松ー、竹ー、梅!w」
クニ「オッサンくさいってww」
アメ「あっ! これまた好きそうな人に飛び火したな~w」
ジュエル「へ~w」
… …。
ほたる「しょしょ、大ー、長ー、老!」
レイン「って “しょ” じゃなくなってるしw」
アメ「また大長老ネタ言ってるしw (こないだちょっと熱く語り過ぎたかw)」
爺さん「ショショ、ショー、ロン、ポー!」
クニ「さすがコックw」
ジュエル「誰が止めるんだろ…w」
…、…、…。 (周りの者は、あえて沈黙を演出していたw)
ジュエル「あ、もうネタ切れっぽいww」
ほたる「…、…、…。」
爺さん「…、…、…。」
クニとレインは、じーっと2人を見つめているw
ほたる「…、…、しょしょ、しょー、かん、しっ!」
アメ「ぉぃぉぃ、戻って来たよw」
ジュエル「戻ってきたね^^w」
爺さん「さーみんなで、乾、杯、じゃっ!」
ジュエル「あ、お爺さんの勝ちみたいだねww」
アメ「はは^^そうだねw さーみんなで乾杯の準備だー♪」
『おおおーーー!!!』
みんなは嬉しそうに声をあげた。
シェディーは嬉しそうに笑っていたが、ここでもマスターの言葉を思い出していた。
「1人の笑顔は皆の笑顔、1人の涙は皆の涙。 共に涙し、共に笑う。 それが、このギルド。」
シェディー「はは、今日はトコトンまで行くか~♪」
夜遅くまで宴は続き、皆の声は、常に2人を温かく包んでいた。
満月の夜、月夜に浮かんだのは、友の笑顔だった。
アメは木にもたれかかり、あの時の光景を再び思い返していた…。
シェディーがたまに見せた、あの優しい笑顔を…。
_______________________________________________
【夏美の回想】
宴が終わり、ジュエルと夏美には、2人用の部屋が用意されていた。
ジュエル「今日は色んなことがあったね。」
夏美「うん。 わたしね…、今ここに居る事が不思議で仕方ないの。 …何度も、もうダメだって思ったの…。」
ジュエル「神様があたし達を助けてくれたんだね。」
夏美「うん、きっとそう。 神様が私達を…、そしてアメさん達みんなと逢わせてくれたんだよ。」
ジュエル「今日はいい事ばっかりだったな~♪ 今日の運勢が良かったのかな?w」
夏美「毎日いい事してれば…、きっと神様が助けてくれるんだよ。」
ジュエル「夏美さんって、きっとすぐに魔法が使えるようになると思うよ。」
夏美「え?どうして?」
ジュエル「だって、夏美さん素直で優しくて、信仰心厚そうだし。」
夏美「信仰心って関係するの?」
ジュエル「そうだよ。 神様に認めてもらえないと、回復魔法は使えないんだよ~。」
夏美「そうだったんだ~。」
ジュエル「あたしも召喚魔法、頑張んないとな~w」
夏美「…(あの時の召喚獣って何だったんだろう。 …、聞くのは今度にしよう。)」
ジュエル「…(夏美さん疲れたのかな?)、夏美さん、それじゃ~おやすみなさい。」
夏美「うん。 ジュエルさん、おやすみなさい。」
翌日、そして翌々日と、アメはギルドで生活していく上で大切な事を、2人に伝えた。
ギルドの事情を説明し、町の商店街へ買い物に行ったり、料理や掃除も一緒にした。
このギルドでは、共に助け合うという事が、最も大切である事を伝えた。
そう、メンバー全員が、家族であるかのように。
そして、次の日の夕刻…、ギルドマスターが帰ってきた。
マスター「ただいま~。」
ジュエル「あっ! おかえりなさ~い^^ノ」
ジュエルは真っ先に、マスターを出迎えた。
夏美「お疲れさまでした。 先日はどうも、ありがとうございました。」
夏美はどんな時でも礼儀正しく、綺麗な姿勢で言葉を交わすのだった。
その姿はまるで、精霊のように神々しい雰囲気を持っていた。
マスター「おぉ~、2人とも元気そうだな^^」
アメ「マスター、2人に早速、面接をw」
クニ「出たよw 面接ww」
シェディー「めめめめ、面接ですってーw んじゃオレも一緒に~w」
クニ「なんでお前がww」
マスター「いや、面接はせん。 今から、契約の準備に取り掛かろう。」
アメ「え?今から?w」
シェディー「なんと!w」
ジュエル「なんだか緊張するな~w ドキドキ^^;」
夏美「大丈夫よ。」
マスター「2人とも、職業はもう決まっておるか?」
ジュエル「はい。あたしは、既に召喚士です^^;」
マスター「おお~これはめずらしい。」
夏美「わたしは…、マスターと同じ、司祭になりたいです!」
マスター「うむ…。 …良かろう。 君には充分にその資質が備わっておるようだ。」
マスターは、最初に夏美に逢った時から、その内に秘められし能力を見抜いていた。
夏美「ほんとですか!」
マスター「少し休憩してから、地下にある契約の間へ行こう。」
夏美「はい^^」
マスターは、椅子に腰かけると、間もなく夏美がやってきた。
夏美「失礼します。 マスター、お疲れさまでした。」
夏美は、マスターに飲み物を持ってきた。
マスター「おおぅ、気がきくのぉ。」
夏美「それでは、失礼しました。」
マスター「しかし、彼女達の笑顔はじつに自然だ。 ここでの生活が心から楽しいのだな。」
アメは、あれからの事を全てマスターに話した。
マスター「そうか…。 そんな事があったのか。」
シェディーがクエストから帰ってきた。
夏美とジュエルが出迎え、楽しく談笑していたシェディーだが、マスターの存在に気付くと…。
シェディー「マスター! おかえりなさい!」
シェディーは素早くマスターへ近づき、片膝をつき首(こうべ)を垂れた。
マスター「相変わらずだな。 もっと気楽にしていいぞ。」
シェディー「いえ、マスターの御恩は一生忘れません。」
シェディーは、忠義を大切にする男だった。
マスター「ふふ、まあよい。 アメから話は聞いたぞ。 顔を上げてくれい。」
シェディーはマスターの顔を見上げ、
シェディー「夏美さん達の事でしょうか?」
マスター「そうじゃ、今回はお主の働きが大きいとアメは言っていた。 本当に良くやってくれた。
彼女たちのあの笑顔を見れば、お主の明るさが彼女達を救っていたのは明白。
心から感謝する。 ありがとう。」
シェディー「…もったいない御言葉にございます。」
シェディーは、再び首を垂れた。
マスター「これからも、2人をよろしく頼むぞ。」
シェディー「はい! 仰(おお)せのままに。」
シェディーは顔を上げ、元気よくマスターに誓った。
ジュエル「シェディーさんって、じつはカッコいいんだね~www」
アメ「なぜか受けてるww」
クニ「ギャップがある男ってのは、女子には好印象なんだぞ~、アメ。」
アメ「そうなんだ~、…φ(..)メモメモ」
夏美「いつもあんな感じなの? マスターとシェディーさんって。」
クニ「うん、そうだね^^ シェディーはマスターには頭が上がらないんだ。」
「ボソボソ(何せ、命の恩人だから。)」
クニは、声をひそめて言った。
クニ「普通にしゃべると、アイツに聞こえちまうんだよなw 鼻と耳いいからアイツw」
夏美「へ~、詳しく教えてもらえませんか?」
クニは、こっそり夏美にささやいた。
クニ「まあ、簡単に言うと、病気だった母親の手術代を、会ったばかりのシェディーにあげたんだよ。」
夏美「え?」
クニ「シェディーは“このまま逃げるかもしんないぞ”って言ったけど、
マスターは“お前の母さんが助かるなら、それでいいじゃないか”
“それに、君の目を見れば、嘘じゃない事は分かる” って言ったそうなんだ。」
夏美「…マスターって、やっぱり。 思ってた通りのすごい人だったんですね。」
クニ「うん、すごいよ。 洞察力がすごいというか…、なんでも御見通しなんだよ。」
夏美「憧れちゃうな~。」
アメ「夏美さん、そろそろ準備しようか。」
夏美「はい。」
アメ「ジュエルさんとシェディーも一緒に来て欲しいそうだ。」
こうして、マスター以下5人は、夏美の“司祭の契約”を取り行うべく、地下室への階段を降りていった。
“契約の間”は、地下室の最奥にある、隠し部屋で行われた。
部屋には大小二つの魔方陣が並んでいた。
マスターは夏美を大きい方の魔方陣へと案内し、夏美を仰向けに寝かせ両手を胸の上で組ませた。
そして、自分はもう一つの小さい魔方陣の上に立った。
マスター「少し長くなりそうだ。皆は座って見てなさい。」
3人は返事をして、マスターの向かいに当たる壁際に移動し、その場に腰掛けた。
マスター「では参るぞ。」
夏美「はい。」
マスター「まず、リラックスしたまま、ずっと天井を見てなさい。
途中で眠くなるから、そのまま眠りを受け入れなさい。
目が覚めたら、契約は完了となる。 では、よろしいかな?」
夏美「はい。」
マスターは魔方陣の封印を解くため、鍵である“呪文”を唱え始めた。
アメ「おやじ、大丈夫かな…。(マスターの様子がいつもと何か違う。)」
アメは何やら違和感を感じていた。
契約の儀式は、1時間近くにまで及び、
そして、夏美は目覚めた。
夏美は、しばらく放心状態になっていた。
ジュエル「夏美さん大丈夫~~~?><;」
ジュエルが駆け寄った。
夏美はゆっくりと上半身を起こし、ジュエルは背中に手を添え、起こすのを手伝った。
アメは結果が気になり、“儀式は無事に成功したのか?” マスターに聞こうとしたが、
マスターは疲れ果て、その場に倒れ込んでしまった。
アメ「おいっおやじっ!!」 シェディー「マスターッ!!」
アメとシェディーはすぐさま、マスターに駆け寄った。
マスター「少し休むわい。」
そう言うと、その場で眠り込んでしまった。
一体どれほどの精神力を使ったというのか?
アメはいつも一緒に立ち会うので、いつもの“契約の儀式”と明らかに違っていた事に気付いていた。
アメとシェディーは、マスターの腕を肩にまわし、近くのベッドに運んで寝かせた。
アメ「今回だけ、えらく時間掛かったな…。」
シェディー「どういう事なんだ…、長旅の疲れなのか? それとも御高齢だからか?」
アメ「…、それより夏美さんが心配だ。」
シェディー「おう。」
二人が部屋に入ると、夏美は通常の意識に戻っていた。
ジュエル「マスターは大丈夫なの?」
アメ「うん、大丈夫。疲れて寝てるだけだよ。」
ジュエル「あ~良かった~^^;」
夏美「良かった~」
アメ「夏美さんは大丈夫?」
夏美「わたし…、夢見てた。 夢の中に色んな人が出てきた。」
アメ「どんな夢だったか覚えてる?」
夏美「うん。 マスターがいて、あと、若い女の人と…、知らないお爺さんやお婆さん…、みんなエルフだった。」
アメ「ごめん、そうだったのか。 それじゃあ、夢の中でどんな事したの?」
夏美「色んな魔法を教えてくれたけど、全然わからなくて、覚えていられなかった。」
アメ「マスターも魔法を教えてくれたの?」
夏美「うん。たぶん。 でも、はっきり思い出せない…。 何でだろ?」
シェディー「おいアメ。…マスターは、夏美さんに何を?」
アメ「…わからない。 マスターが目覚めてから聞こう。」
夏美「(でも、あの若い女の人…、お母さんに似てたような…。)」
_______________________________________________
アメ「(マスターが意識的に魅せた術だとすると、それはマスター自身の記憶にある人物…。)
(若い女性……! もしかすると、夏美さんって…。)
(夏美さんのお父さんは、生まれてすぐに里を出て行ったというし…。)
(それじゃ~、ボクはマスターの…。)」
シェディー「(…ん? 2人とも考え込んで…、どうしたんだろう?)」
シェディーはその場の空気を読み取り…。
シェディー「…しっかし、長かったね~ジュエルさんw」
ジュエル「うん…、退屈しちゃった^^; あっw」
シェディー「だよね~w もうオレなんかトイレに行きたくてどうしようかとww」
ジュエル「じゃ~早く行ってきなよ~ww」
シェディー「じゃ~ ジャー、ジャ~~、…行ってきまーっすww」
ジュエル「・・・」
シェディー「モーレールーw」
ジュエル「いいから早くってば~w」
シェディー「は~いw」
ジュエル「んも~うww」
シェディーは部屋を出ると、歩きながら考えていた。
マスターとアメ、それに夏美の過去を…。
数時間後、マスターは目覚めたが、アメの質問には…、
マスター「わしはただ、契約の儀式をしただけ…、
疲れと衰え、それに彼女の資質の高さで、だいぶ時間が掛かったがな。」
素質の高そうな連中を何度も契約させてきたマスターだが、今までに今回ほどの時間は掛からなかった。
それに、なぜ帰ってすぐに契約の儀式をやったのかも疑問に思っていた。
アメは納得できず、マスターを問い詰めた。
アメ「なら、なんで疲れてるのに、帰って早々に儀式を?」
マスター「わしもいつ死ぬかわからんからなw
それに資質の高いもんは、出来るだけ早く契約しとけば成長も早いからな。」
アメは納得いかない表情だった…。なぜ本当の訳を教えてくれないのか?
なぜ隠す必要があるのか?
結局、真意が分からぬままだったが、夏美の契約の儀式は、無事に成功した。
それから数年が経ち…、現在。
『おかえり~』
そこはギルド「オルケスタ」の入口。
ジュエルは、なぜか外にいたオルケスタメンバー2人に声を掛けられた。
シェディーは「マスターが気になる」と言い残し、ジュエルを置いてマスターの元へ馬を走らせていた。
アラオ「早かったんだね~、もう真っ暗だけどw」
デスペラード「おこんばんです~^^」
ジュエル「こんばんわ~w ・・・」
ジュエルは2人の風貌、シチュエーションを見て、唖然としていたw
ジュエル「…なんでこんなとこ(道の真ん中w)にいるの?w」
アラオ「“ストリート好き”なもんでw」
デスペラード「“仮面好き”なもんでw」
ジュエル「・・・ “道着好き”だからじゃないんだ?w」
デスペラード「道着はオプションです!w」
ジュエル「・・・ どっちも良く分かんないんだけど~w
あの~そんな事よりww マスターに謁見したいのですが、こももさんの事で^^;」
デスペラード「そそそそ、そんな事!ww」
アラオ「言われてますぞw Dさんw」
デスペラード「You win! Perfect!!」
アラオ「Sha---!!」
ジュエル「・・・ 良く分かんないw」
デスペラード「さぁさぁ、マスターはおそらく2階にいますよ。 どぞどぞ。」
ジュエル「ありがと^^」
怪しい格好のDさんの案内で、オルケスタのマスターと謁見したジュエルは、事の次第を説明した。
オルケ・マスター「ふむふむ、そういう事か…。ならば、急ぎ増援を出そう。」
「こももは大丈夫じゃろうが、夏美さんが心配じゃw …あ、アメもじゃよw」
ジュエル「あ、はい^^; (こももさんは心配してないんだ…w)」
マスターは立ち上がり、ジュエルを連れて1階へと降りた。
マスターはメンバーに事情を説明し、増援メンバーを発表した。
オルケ・マスター「まず、こももと夏美さん、それに負傷したアメの捜索には、
ノーマ、アラオ、ミント、ひなた。
この4名で行ってもらう。 馬は2頭で行ってくれ。
手掛かりは、“アメは足を負傷し、炭鉱村から伸びる川沿いを馬で下っている”という事だけ。
魔法での明かりは禁止とする。 追手に見つかる危険性があるからじゃ。
ではノーマ、あとは頼んだぞ。」
ノーマ「はい! わかりマスタ!」
「ぅんだばみんなぁ! ずんび(準備ねw)すっだべさ~っ!」
アラオ「ぅんだば~!」
ミント「ずんびずんび~♪」
ひなた「だべさだべさ~♪w」
ジュエル「さっすがオルケスタ。 …どんなにつまんなくても、合わすのがお上手w^^;」
デスペラード「ぷぷw つまんないってさw」
ノーマ「なんだとー!w …こないだ素の方がオモロイって言われたのに~w」
デスペラード「どっちでもつまんない… ぷぷw」
ノーマ「ずんびがあるから、あんまりいじらねえで区ダセエw」
オルケ・マスター「コホン=3w え~そして~、ギルド“カイト・キャッツ”への増援には~!
テネシー、コヴァ、ハニー、麗奈。
こちらについては急を要す! 急ぎ準備して出発だ!
わしもジュエルさんと一緒に行こう!
“留守番”組には、馬を3頭用意してきてもらおう。」
テネシー「よし! すぐに準備しよう! 時間が無い!」
コヴァ「よし! 急ごう!」
麗奈「よし! 行くか!」
デスペラード「よしっ! 幾三っ! …あっ!オレ“留守番”組かw」
えれ「ちょっ! …あ、わたしもかw」
丹波「んじゃ~3人でお馬さん連れてきますか~♪」
マスターもさすがに状況を察し、…裸足でグローブをはめた仮面の男は、留守番としたw
デスペラード「みんな、あえて“幾三”は総スルーなのね…w」
ハニー「なんかみんな気合い入ってるな~w この歴代リーダーズめーw」
麗奈「あ、それアメさんの言い方w あっし達向こうのがいいんじゃないの?w」
ハニー「マスターは感情と冷静さを秤(はかり)にかけて選んだんだよ~。…たぶんw」
麗奈「んだんだw こっちは気合入りすぎだもんねw 約3人がw」
ハニー「って“約”いらないからw 3人っ!w」
麗奈「も~ 遠慮せずに気合い入れてこ~よ~w」
ミント「ぅんだば、こちとらお先に行ってきやすね~」
ひなた「みぃーつぅー」
アラオ「ノーマ置いてくぞーw」
ノーマ「お、置いてかないでーw まままま、まてやぁー!」
ひなた「アメさんの寝顔まてやぁー!」
ミント「寝顔まてやぁーw (ん?なんで寝顔?w)」
アラオ「まてやぁー!」
ジュエル「あ、シェディさんマネが連鎖してるw^^;」
ノーマ「にゃろまてーぃw」
ジュエル「あ、アメさんも入ったw …最近、アメさんそれ言わないな~。。。」
オルケ・マスター「大丈夫。 明るい未来を取り戻せば、きっとまた言ってくれるよ。」
マスターはジュエルの肩を、そっと叩いた。
麗奈「ずんびバンタン!」
テネシー「デワ、イキマスカ!」
コヴァ「イカレマスカ!」
ハニー「っしゃ!いこうっ!」
麗奈「よしっ! みんないい感じの気合い乗りですよっ! マスターw」
オルケ・マスター「よしよし。 頼もしいわい^^ でわ助さん角さん、参りますかっ!?」
テネシー「あいさー!」
コヴァ「こいさー!」
麗奈「どっこいさー!」
ハニー「ハイでたw オヤジギャグw リーダーズめーw」
ジュエル「あ、またアメさんw マスターまでこんなだとはww」
麗奈「ん?ジュエルさん今なんて?w “こんな”ですって?w」
ジュエル「あ、いえw なんにも言ってませんw (耳いいな~ww これは不用意にしゃべっちゃダメだな~w)
…でも、このギルドも楽しそうだな~w ぼそっ(ちょっとカオス気味だけどww)」
麗奈「え?ジュエルさん、なんか今“カオス”って聴こえたような?w」
ジュエル「いえw ひとり言ですw^^;」
麗奈「すごい汗w、大丈夫かな?この子w」
こうして、カオスな雰囲気のオルケスタのメンバーと共に、ジュエルはカイト・キャッツへと向かった。
ジュエルは道中も思っていた…「早く行きたかったんだけどな~ww」
一方、カイト・キャッツ前に着いたシェディーは…、
シェディー「(マスター…。)」
ギルドの手前で馬から降りたシェディーは、様子をうかがいながらギルドの正面玄関に近づいて行った。
中はいつもの様子と変わりはないようだった。
シェディー「ただいまー!」
爺さん「お~、おかえり~。 ってこんな早く帰ってきて…? クエストはどうしたんだい?」
厨房から爺さんが出てきて言った。
シェディー「マスターは?」
爺さん「あぁ、部屋にいるはず…。クニとほたるが見とるんじゃないかのぅ?」
シェディーはそれを聞くと、急いで2階へ駆け上がった。
爺さん「まったく、せっかちじゃの~ぉw」
爺さんは再び厨房に入り、晩御飯の準備をした。
コンコン=3=3
シェディーはマスターの部屋をノックしたが、中からは返事も物音一つも聞こえてこなかった。
寝ているのかと思い、ドアをゆっくり開け中の様子を覗き見ると…、
ベッドの上に、マスターの姿は無かった。
シェディーは部屋に駆け込み、マスターを探した。
シェディー「マスター!?」
呼んでも返事が聞こえてこない。
遅れて厨房で爺さんをを手伝っていたレインが、部屋に入ってきた。
レイン「シェディーさんおかえり~、どうかしたの? 急いでたけど。」
シェディー「いない。」
レイン「え?!」
シェディー「マスターがどこにもいないんだ!」
レイン「いつ出て行ったのかしら?」
シェディー「トイレか? クンクン(-ωー)」
レイン「も~w わたし見てくるw」
シェディーはこういう状況であっても、女性といる時は“三枚目”に振る舞う癖があった。
だが、シェディーは不安だった。
なにか手掛かりが有るはずだと、辺りを見渡した。
机の上、引き出しの中、枕の下、ベッドの下…。
そこへ、レインが走ってきた。
レイン「マスターがどこにもいないの! トイレにも、他の部屋にも!」
シェディー「あのお体で一体どこへ? もしかしてアメを追って?」
レイン「うーうん。 晩御飯の準備をする前は看病してたから…、それにもう真っ暗なのに無理よ。」
シェディー「でもマスターなら行くかもな~。」
レイン「あれ? そーいえば、クニさんとほたる君がいない!?」
シェディー「あいつら、こんな時にどこ行ったんだ!?」
シェディー「マスターの行き先…、(ナンパ? いやいやオレじゃあるまいし…w)、…地下室、…オルケスタ。」
レイン「わたし見て来ようか?」
シェディー「いや、オレが行くよ。 レインさんは爺さんと一緒にいて。」
レイン「わかった。」
シェディーは地下室に降り、契約の間も覗いたが、人の気配は無かった。
そして、オルケスタへ戻ろうと、庭で待たせていた馬に近づこうとした時、
ほたる「おーい!」
遠くから聞こえてきたのは、ほたるの声だった。
シェディー「一体どうした?」
ほたる「マスターがピンチなんだ!」
シェディー「なにっ!! おいっ! どこなんだ!?」
シェディーの迫力に驚き、ほたるは戸惑いながらも答えた。
ほたる「あ、案内するよ。 クニさんがそこで様子をうかがってるんだ。」
シェディー「馬で行くぞ! 乗れ!」
ほたる「うん。」
2人の声を聞いて、レインがギルドを飛び出してきた。
シェディー「レインさん! マスターのところへ行ってくる! だから、ギルドを頼む!」
レイン「え? 場所はどこ?」
ほたる「ウェスタン大通りの路地裏だよ。」
シェディー「分岐に馬を置いてく! もしジュエルさんと増援が来たら、部隊の半分でこっちに来て!」
レイン「分かった~! 気を付けてね~!」
レインはあえて聞かなかったが、あのシェディーの慌てぶりを見て、ことの重大性を察した。
しかし、今のギルドには2人しか残っていない…、ギルドの防衛は不安だった。
レイン「も~、あの3人は一体どこ行ったのよ~。 早く帰ってきてよ~><」
レインの言う3人とは…? 次回につづく。
GARNET CROW - Fill Away
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